ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

ページ
74/98

このページは 日本結晶学会誌Vol60No2-3 の電子ブックに掲載されている74ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

千田美紀,安達成彦,千田俊哉,Maharani Pertiwi Koentjoro,小川直人て最近明らかになったことを紹介したい.2.芳香族塩素化合物分解菌のクロロカテコール分解酵素遺伝子群の転写調節因子CbnRわれわれのグループでは,土壌細菌Cupriavidus necatorNH9株がもつクロロカテコール分解酵素遺伝子群の転写調節因子であるCbnRを研究ターゲットとしLTTRの研究を続けている(図2).クロロカテコールは,環境汚染を引き起こすさまざまな芳香族塩素化合物の微生物分解で,キー代謝産物として生じる化合物である.われわれはまず2003年に,全長のLTTRとしては世界で初めて,このCbnRの結晶構造を決定した.6)CbnRのX線結晶構造解析の結果から,LTTRが特徴的な四量体を形成すること,4つのDNA結合部位がV字型に配置することが示され,そのV字型構造により,約60塩基対にもわたるcbnAプロモーター領域に結合するとともに,DNA図2クロロカテコール分解酵素遺伝子群の転写調節因子CbnRの転写調節機構.(CbnR regulates transcription of thecbnABCD genes)CbnRが約60塩基対のプロモーター領域を認識し,さらに代謝産物であるクロロムコン酸が誘導物質として結合することにより,クロロカテコール分解酵素遺伝子群cbnABCDの転写を活性化することが知られている.5)図3CbnR四量体の結晶構造.(CrystalstructureofCbnRtetramer.)(a)全長CbnRでは,四量体の4つのDNA結合ドメイン(DBD_1,DBD_2,DBD_3,DBD_4)がV字型に配置していた(PDBID:1IZ1).CbnR四量体は高塩濃度で安定である.(b)各サブユニットはN末端側のDNA結合ドメイン(DNA binding domain:DBD)とC末端側の誘導物質結合ドメイン(regulatory domain:RD)がcoiled-coil linkerで結ばれており,ドメインの相対位置が伸びた構造をとるExtended formと縮まった構造をとるCompact formが存在する.(c)低塩濃度ではExtendedformとCompact formの構造の異なるペアで形成される二量体が安定である.この二量体2つがさらに組み合わせられて四量体(a)が形成される.136日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)