ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

DNA構造バイオナノテクノロジー図2TTミスマッチを含むDNAの水銀イオン存在下での結晶構造.(a)塩基配列と全体構造,(b)T-Hg(II)-T塩基対,(c)2つのHg(II)間に働く相互作用.(CrystalstructureofaDNAduplexcontainingTTmismatchesobtainedinthepresenceofHg(II).(a)DNAsequenceandoverallstructure,(b)T-Hg(II)-Tbasepair,(c)InteractionbetweentwoHg(II).)図3CCミスマッチを含むRNAの銀イオン存在下での結晶構造.(a)塩基配列と全体構造,(b,c)C-Ag(I)-C塩基対.(CrystalstructureofanRNAduplexcontainingCCmismatchesobtainedinthepresenceofAg(I).(a)RNAsequenceand overall structure,(b, c)C-Ag(I)-C base pair.)ソン・クリック型の塩基対のプロペラ角に比べて著しく大きくなっていたが,これはCの4位にあるアミノ基同士の立体障害によるものと考えられる(図3c).T-Hg(II)-TおよびC-Ag(I)-Cの構造からも明らかなように,重金属イオンのうち直線型二配位構造を形成するものだけがDNA二重らせん中の塩基ミスマッチに入り込み,重金属仲介塩基対を形成しうる.そのため,Au(I)やCu(I)もこのような塩基対を形成する可能性がある.2.2重金属仲介塩基対のナノデバイスへの応用例ナノマテリアルとして優れた特性をもつDNAと,重金属が仲介した新しいタイプの塩基対を融合させれば,さまざまなナノデバイスに応用できる.例えばDNA中で日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)の重金属仲介塩基対形成を明らかにした小野晶教授の研究グループは,T-Hg(II)-T塩基対を利用して水銀イオンセンサーを開発した(図4a).18)このセンサーはTを多く含む配列でできており,両末端には蛍光剤と消光剤を付加しており,通常は不安定な一本鎖状態で存在するために蛍光を発する.しかしHg(II)が微量にでも存在する条件では,T-Hg(II)-T塩基対を形成することでヘアピン構造に変化するので,近接した蛍光剤と消光剤との間で蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:Fluorescence ResonanceEnergy Transfer)が起こり,センサーが蛍光を発しなくなる.これによって水銀イオンを高感度に検出することができる.123