ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

ページ
57/98

このページは 日本結晶学会誌Vol60No2-3 の電子ブックに掲載されている57ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

粉末回折法を用いた新しい定量分析法の開発とパターソン関数図4α-quartz,albiteおよびkaoliniteの3成分系混合試料に対して全パターンフィッティングを行った結果.(Resultof whole-powder-pattern fitting applied to a three-component mixture containingα-quartz, albite and kaolinite.)図の表示は図2と同様. 10)表5DD法を用いた定量分析の結果.(Results of QPA by using the DD method.)試料はα-quartz(Q),albite(A)およびkaolinite(K)の3成分系混合試料(SM-g).3回の詰め直し,繰り返し測定の結果(1)~(3)を示す.ΔwkはΔw k=wk-w weigh(w weigh=秤量値)を表す. 10)ComponentQ50.0049.46-0.5450.780.7850.340.34A39.9739.95-0.0239.19-0.7839.16-0.81K10.0310.600.5710.030.0010.500.47RMSE0.460.630.57R pR wpR pR wpR pR wp10.76%15.40%10.32%14.48%10.56%14.99%んでいて構造モデル計算が困難な粘土鉱物のほか,結晶性が低いためにパターン分解もできず,正確な構造解析もなされていないγ-aluminaや炭酸ランタン水和物など,従来の定量分析法では困難であった試料の定量分析をできるようになる.8.まとめX線回折法を用いた定量分析とは,基本的に回折強度の相対比から各相の重量比を求める作業である.例えば合成実験で複数相が混在するとき,各相の最強ピーク強度の比を合成温度に対してプロットし,その相対的な変化を捉えることができる.しかし,この相対比のままでは定性的な結果であって,それを各相の重量比に結び付けることができない.測定された各結晶相の回折強度を比較できる共通の強度標準が必要で,その標準スケールの上で比較しなければならない.リートベルト定量においては,結晶構造パラメータから求めた理論強度が強度標準になっている.もう1つ広く使われる方法が標準物質の回折強度を基準にし,被験試料の回折強度との相日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)対強度比を実験的に求めるものである.前者では結晶構造パラメータが必要とされ,後者では事前に標準物質と混合した試料の強度比測定といった実験作業が必要とされる.PONKCS法,FPF法,RIR法がこの方法に基づいている.DD法における式(8)は,その物質の化学式量当たりの散乱能を与える.これは単位質量当たりの散乱能(SRI)に比例する.全散乱強度を単位質量当たりの散乱強度で除すことによって,その物質の重量に相当する量が得られる.この解釈をリートベルト定量に適用すれば,リートベルト定量も同じ考え方に基づいていることを理解できる.式(9)からわかるように,リートベルト定量の場合,構造因子を計算することによって化学式量当たりの散乱能を計算していると解釈することができる.DD法では式(3)による近似を導入することによって,化学組成のみから散乱能を計算することを可能にしている.この近似を可能にしているのがパターソン関数というわけである.その結果,§7の例で示されたように,DD法を用いれば,被験試料の構成成分に関して結晶構造が119