ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

山下恵太郎いたように思われる.結晶の質の高さが幸いしたことは言うまでもないが,マイクロビーム技術とBL32XUで整備された種々のソフトウェア環境によって,これまでできなかったような構造解析が可能になったことを示す好例と言えるだろう.6.おわりに微小ビーム技術の発展によって微小結晶を用いた構造解析が可能になり,これまで大きく良質な結晶が得られず構造解析できなかったような試料も解析可能になった.BL32XUが供用開始して初期の頃は細長い結晶1つからヘリカルデータ収集によって完全なデータを収集することが多かったが,small-wedgeデータ収集のスキームが確立されたため,さらに小さな結晶しか得られないケースにも対応できるようになった.SHIKA・KAMOを含む微小結晶のためのワークフローおよびソフトウェア環境整備と,その自動化システムZOOの開発によって,そのような微小結晶を用いた構造解析が非常に簡易化・高速化された.今ではsmall-wedgeのデータ収集が最も一般的になっている.特にKAMOは大量に収集したsmall-wedgeデータセットの処理を劇的に単純化し,憂いなく大量のデータ収集を行えるようになった.大量のデータを集め,適切にマージを行うことで,より高い分解能かつ高い精度のデータが得られ,本稿では紹介できなかったがSAD法による位相決定含め多数の構造解析に成功している.今後も各プログラムの高速化・高性能化を続けていきたい.謝辞本研究は,日本医療研究開発機構(AMED)「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業」および日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金研究活動スタート支援「多数の微小結晶を用いた結晶構造解析手法および自動化システムの開発」などの支援を受けて行われました.関係各所に深く感謝します.また本研究の遂行にあたり,SPring-8構造生物学ビームライン関係者の方々には大変お世話になりました.特に素晴らしい研究環境を提供して下さった山本雅貴部長には深く感謝申し上げます.SPring-8 BL32XUのユーザの方々には実サンプルの提供やフィードバックを通じて多大なご協力を頂きました.中でも京大岩田研,東工大上野研,東大濡木研,理研横山研,理研白水研の皆様には特にお世話になりました.§5.2の実例紹介は,阪大高木研のご厚意によるものです.また執筆にあたり原稿を丁寧に見て下さった中根博士に感謝します.最後に,学生時代の恩師である田中勲・姚閔両先生に感謝申し上げます.出身研究室での経験がなければ本研究は成しえませんでした.文献1)M. Caffrey: Acta Cryst. F 71, 3(2015).2)I. Schlichting: IUCrJ 2, 246(2015).3)U. Zander, et al.: Acta Cryst. D 71, 2328(2015).4)K. Hirata, et al.: submitted(2018).5)Z. Zhang, N. K., Sauter, H., van den Bedem, G. Snell and A. M.Deacon: J. Appl. Cryst. 39, 112(2006).6)A. Barty, et al.: J. Appl. Cryst. 47, 1118(2014).7)T. Nakane, et al.: J. Appl. Cryst. 49, 1035(2016).8)C. Mueller, et al.: Struct. Dyn. 2(2015).9)G. J. Winter: Appl. Cryst. 43, 186(2010).10)C. Vonrhein, et al.: Acta Cryst. D 67, 293(2011).11)W. Brehm and K. Diederichs: Acta Cryst. D 70, 101(2014).12)W. Kabsch: Acta Cryst. D 70, 2204(2014).13)J. Foadi, et al.: Acta Cryst. D 69, 1617(2013).14)R. Giordano, R. M. F. Leal, G. P. Bourenkov, S. McSweeney and A.N. Popov: Acta Cryst. D 68, 649(2012).15)K. Diederichs: Acta Cryst. D 73, 286(2017).16)U. Zander, et al.: Acta Cryst. D 72, 1026(2016).17)G. Assmann, W. Brehm and K. Diederichs: J. Appl. Cryst. 49, 1021(2016).18)K. Yamashita, K. Hirata and M. Yamamoto: Acta Cryst. D 74,(2018).19)W. Kabsch: Acta Cryst. D 66, 125(2010).20)D. G. Waterman, et al.: CCP4 Newslett. Prot. Cryst. 49, 13(2013).21)M. D. Winn, et al.: Acta Cryst. D 67, 235(2011).22)R. W. Grosse-Kunstleve, N. K., Sauter, N. W. Moriarty and P. D.Adams: J. Appl. Cryst. 35, 126(2002).23)P. R. Evans: Acta Cryst. D 67, 282(2011).24)H. N. Chapman, et al.: Nature 470, 73(2011).25)J. W. Tukey: Exploratory data analysis, Addison-Wesley(1977).26)K. Diederichs: Acta Cryst. D 66, 733(2010).27)P. H. Zwart, R. W. Grosse-Kunstleve and P. D. Adams: CCP4 Newsl.43, 27(2005).28)P. R. Evans and G. N. Murshudov: Acta Cryst. D 69, 1204(2013).29)S. Abe, et al.: ACS Nano 11, 2410(2017).30)F. Coulibaly, et al.: Nature 446, 97(2007).31)R. Taniguchi, et al.: Nature 548, 356(2017).32)W. Shihoya, et al.: Nat. Struct. Mol. Biol. 24, 758(2017).33)Y. Lee, et al.: Nature Plants 3, 825(2017).34)H. Miyauchi, et al.: Nat. Commun. 8, 1633(2017).35)R. Suno, et al.: Structure 26, 7(2017).36)T. Hori, et al.: Nat. Chem. Biol. 14, 262(2018).プロフィール山下恵太郎Keitaro YAMASHITA国立研究開発法人理化学研究所放射光科学研究センター〒679-5148兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1e-mail: keitaro.yamashita@riken.jp最終学歴:北海道大学大学院生命科学院生命科学専攻博士後期課程専門分野:X線構造生物学現在の研究テーマ:微小結晶を利用した構造解析112日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)