ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

微小結晶を用いたタンパク質X線結晶構造解析におけるデータ処理システムの開発表2KAMOを用いた場合と用いなかった場合のデータ処理および精密化の統計値(polyhedra, 5GQN).(Data processingand renement statistics with and without KAMO for polyhedra data:5GQN.)Non-KAMO(all data merged)KAMOData processingNo. merged datasets15718Unit cell parameter(A)a=103.6a=103.2LCV†(%)2.20.4overallinner shellouter shelloverallinner shellouter shellResolution range(A)50~1.5550~4.651.64~1.5550~1.5550~4.651.64~1.55Completeness(%)100.099.8100.099.999.799.9Multiplicity83.889.774.89.6910.19.52R meas1.7990.4525.7780.2740.1400.896〈I/σ(I)〉7.6420.761.246.5913.922.09CC 1/20.6990.9400.3520.9840.9890.753RefinementR work0.19810.1411R free0.24380.1765Average B values(A 2)7.110.7†LCV is the linear cell variation defined in BLEND 13)図7(a)複数のplexinB1結晶が収められていたクライオループおよび(b)そのスキャン結果(SHIKA).((a)Cryoloopcontaining plexin B1 crystals under coaxial microscope and(b)raster-scan result shown in SHIKA.)(a)の顕微鏡像は後にBL44XUで撮影したもの.中央の十字は長さ100μmである.されてしまう.あるいは,クラスタリングが適切に行えても,全体的なデータ数が不足していて統計精度が不十分になってしまった可能性も考えられる.Small-wedgeで対称性の低い結晶のデータ処理は今後改善していきたい.5.2クラスター状結晶からの構造解析最後に,最近BL32XUで行われた印象的なユーザ実験について紹介したい.いわゆるウニ状の針状結晶しか得られず困っていたというケースで,それをナイロンループでいっぺんにすくい上げ凍結してきたという状態からビームライン実験は始まった.試料はplexin B1と人工リガンドの複合体である.ゴニオメータヘッドにマウントして同軸顕微鏡下で見る限りではループ中に整然と結晶が収まっている様子ではなく,判然としなかった(図7a).ひとまず5×5μm 2のビームサイズで二次元スキャンを行い,SHIKAで結果を見たところ,よく反射の現れている箇所が大量に見つかった(図7b).ここから日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)最小距離10μmを離してスポットの多い箇所を40箇所選択し,KUMAでそれぞれから10°ずつ回折データを収集するスケジュールを作成してデータ収集を開始した.KAMOによって即座にデータは処理され,40個中36個が同一格子として処理されて対称性はP2と推定された.そのままマージまで行い,分解能は2.6 A程度と判断した(CC 1/2~0.5 in outer shell).すぐに既知部分の構造を用いてPhaserを用いた分子置換を行い,構造未知部分の電子密度が観察できる明確な解を得た.単斜晶系ということもあり,観測できていない逆空間領域も少々あったが,分子置換の解を得て電子密度を確認するには十分であった.結晶を拾う過程で,複数の針状結晶が折れたりしてちょうどよく方位がバラついたのだと思われる.実験開始から以上の結果を得るまで,わずか1時間弱であった.本稿で述べた開発以前の状況では,あのようなクライオループからはデータを取ろうともせず諦めて111