ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

微小結晶を用いたタンパク質X線結晶構造解析におけるデータ処理システムの開発図3(a)LPA 6と(b)BLT1の結晶方位の分布(試料に関しては表1を参照).(Crystal orientation distribution of(a)LPA 6and(b)BLT1;see Table 1).結晶座標系における入射ビーム方向をランベルト正積方位図法で示している.8)観測された入射ビーム方向にはLaue対称(mmm)の対称操作を適用してある.これらのプロットはyamtbx.beam_direction_plotコマンドで生成された.図4複数のsmall-wedgeデータを処理する場合のKAMOプログラム利用の流れ.(The flow of KAMO programs formultiple small-wedge case.)基づいてデータを分類する手法も最近提案された.15)同型データの選別は組み合わせ最適化問題であるので,遺伝的アルゴリズムの適用も研究されている.16)異常値検出にはCC 1/2に基づく方法も提案されている.17)以上のようにさまざまな開発は行われているものの,微小結晶から収集したデータを構造解析に利用できる状態へ自動的に処理する仕組みはわれわれの知る限り存在していなかった.自動データ処理は,ハイスループット構造解析には非常に重要であり,またビームライン実験へのリアルタイムなフィードバックにも有用なものとなる.4.KAMOによる自動データ処理大量の微小結晶から収集したデータの処理を手作業で行うことはあまりに複雑なので,その全工程を簡易化するためKAMO(Katappashikara Atsumeta data wo Manualyorimoiikanjide Okaeshisuru)を開発した.18)2014年末から開発を開始し,2015年末からGitHubにてNew BSDLicenseで公開している(https://github.com/keitaroyam/日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)yamtbx).KAMOはXDS 19)や,DIALS 20)などのCCP4 21)のプログラムを用いて,自動処理を行う.KAMOを開発したことによって,大量の微小結晶を用いてより高分解能・高精度のデータが容易に得られるようになった.ZOOによる自動化と組み合わせることで微小結晶を用いた構造解析が飛躍的に促進され,多大なコストを払って結晶を大きく成長させなくとも容易に構造決定ができるようになった.なお,KAMOに関しては本誌59巻5号(2017)の「最近の研究動向」欄に概要を記述しているので,あわせて参照されたい.4.1 KAMOの全体像KAMOには,個別データセットの自動処理機能に加え,同一格子に属するデータセットの選択,クラスタリング,異常値除去とマージ,レポート作成の機能が備わっている.KAMOを用いた処理の流れを図4に示した.KAMO自体はPythonで書かれており,結晶学的計算は大部分をCCTBXライブラリ22)に依存している.個別データの処理とマージはXDSパッケージ19)からXDSおよび107