ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No2-3

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概要

日本結晶学会誌Vol60No2-3

ネスポロマッシモ図6黄鉄鉱とhettotypeのベルニクハウセンツリーの例.黄鉄鉱(上),ゲルスドルフ鉱(右),PdS 2(左中),輝コバルト鉱(左下)の構造比較.(文献10)より)図7(左)黄鉄鉱,(中)PdS 2および(右)輝コバルト鉱の結晶構造(VESTAで描かれた:文献11)).PdS 2の空間群は黄鉄鉱の空間群の最大部分群だが,層状構造のためc軸に沿ったPd-S結合は長くて弱い.このことはc格子定数の大きな変化と対応する.逆に,輝コバルト鉱では,黄鉄鉱の硫黄の半分がヒ素に置換されることによって対称性がさらに低下するのにもかかわらず,黄鉄鉱の結晶構造により近い.でないPbc2 1に結晶化するので途中の最大部分群Pbcaを通す必要がある.この空間群タイプに別の化合物(PdS 2)が結晶化し,これも黄鉄鉱構造と厳密な関係をもっている.黄鉄鉱から輝コバルト鉱まで並進操作が保たれ,点群操作が消失するためt-部分群となる.途中のPdS 2までは部分群の指数は3であり,金属原子も非金属原子も席対称性が低下し(それぞれ3と3から1と1へ),分割しないので初期モデルの座標は黄鉄鉱と同じ.Pdの位置に自由座標はないのに対してSは一般位置にある.精密化の結果と比較すると,Pdは動いていないがSはc軸方向に大きく動いたことに気付く.z座標の差とc/a比の差(黄鉄鉱では1,PdS 2の場合は約1.4)は金属原子の配位を反映する.黄鉄鉱の場合はFeは6配位(正八面体)に対してPdS 2の場合はPdは4配位である.次に,輝コバルト鉱(CoAsS)の構造モデルを導くためには,原点の移動(-?,0,0)が必要.Pbc2 1はPca2 1の非標準設定である.aristotypeの基底ベクトルと平行になるように選ばれた設定である.この空間群タイプはビーベルバッハ群(文献2)を参照)なので一般位置しかない.PdS 2では金属原子は特殊位置を占めていたので輝コバルト鉱では席対称群が低下する.一方,硫黄はすでに一般位置にあったので分割する.Aristotypeから得られる初期モデルはFe(0,0,0)→Co(?,0,0),S(0.384,0.384,0.384;0.616,0.616,0.616)→S(0.634,0.384,0.384),As(0.856,0.616,0.616)となる.図7の構造精密化のデータと比較するとaristotypeから導入したモデルとほぼ同じ結果になったことがわかる.86日本結晶学会誌第60巻第2・3号(2018)