ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4

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概要

日本結晶学会誌Vol59No4

クリスタリットオングストロームビーム電子回折法Angstrom-Beam Electron Diffraction Method擬メロヘドラル双晶Pseudomerohedral Twin双晶を関係づける対称操作がその結晶の格子の点群に含まれる場合,その双晶をメロヘドラル双晶という.例えば,どの格子も対称心をもつので,反転双晶はメロヘドラル双晶である.メロヘドラル双晶においては,双晶を構成する個体(結晶ドメイン)間の格子点および逆格子点が一致する.一方,非メロヘドラル双晶においても,例えば六方晶の結晶が構造相転移により6回回転対称性を失い直方晶となり,双晶を形成する場合,それぞれの格子定数がa o ? a h,b o ?√3a h,c o ? c h(ao,bo,co:直方晶相の格子定数,ah,ch:六方晶相の格子定数)の関係にあるときには,結晶ドメイン間の格子点が重なり合うことになる.この例のようにメロヘドラル双晶の定義からは外れるが偶然に格子点が重なる場合,そのような双晶を擬メロヘドラル双晶という.回折実験においては,結晶ドメイン間の逆格子点が一部,あるいはすべて一致するため,真の空間群の決定が困難となる.しかしながら,正しい空間群を用いて適切な双晶を仮定すれば,単結晶X線回折により高い精度で構造解析できる.(名古屋工業大学大学院工学研究科浅香透)不均一アモルファスHeterogeneous Amorphousアモルファスとは,結晶のように原子が規則正しく並んでおらず,ほぼランダムに配置されている状態のことであるが,多くのアモルファス物質は多少の揺らぎはあるものの基本的には組成や構造はほぼ均一であることが多い.しかし,アモルファス形成時に不均化反応が進行するアモルファスSiOのような系においては,通常の透過電子顕微鏡観察では確認できない程度のナノレベルにおいて,構造・組成不均一性を内在する場合がある.このような物質を不均一アモルファスと呼ぶ.ガラスの分相のようにサブミクロン~ミクロンのオーダーで明確に2相分離しているようなものとは異なる.(東北大学平田秋彦)日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)走査型透過電子顕微鏡において非常に小さい集束レンズ絞りを使うことにより電子線をサブナノメートル(4~8オングストローム程度)まで絞り,アモルファスの局所領域からの電子回折パターンを撮影して解析する手法.特定の方位を向いた局所構造のみが強い回折強度を与えることを利用して,試料中に埋まった局所構造の情報を引き出すため,薄い試料を用いてできる限りビームを絞り,ほかの方位を向いた局所構造からのバックグラウンドを抑える必要がある.ただし,ビームを絞りすぎると回折パターンが不明瞭になるため,ビームを準平行(1~3 mrad程度)に保つことも同時に必要となる.局所構造の抽出にはサブナノスケールまでビームを絞ることが本質的に重要であるため,一般のナノビーム電子回折とは区別して,特にオングストロームビーム電子回折と呼んでいる.走査機能によって電子線の位置を制御できるため,アモルファス中の各局所領域からの位置情報付き電子回折パターンをデータセットとして取得することができ,局所構造の空間分布などを調べることも可能である.(東北大学平田秋彦)ヘムHeme五員環構造をもつピロール分子が4つ組み合わさってできたポルフィリンという分子と鉄からなる錯体化合物の総称.ヘムはヘムタンパク質の補欠分子として機能する.結合様式はタンパク質によって大きく異なり,それがヘム酵素の反応の多様性を生み出している.一般には,ヘムはヘモグロビンに含まれているb型のヘム(Fe 2+とIX型プロトポルフィリン錯体)を指すことが多いが,置換基の種類と位置によってさまざまなタイプがあり,主要なものはb,a,c型である.a型ヘムの特徴は,長いイソプレン鎖とホルミル基がある.b型ヘムをもつヘモグロビンやミオグロビンでは酸素運搬の役割を担い,ペルオキシダーゼやNO合成酵素では酸化還元反応に寄与する.c型ヘムは側鎖がタンパク質のCys残基に共有結合している.ヘムは電子伝達系や光合成を行うタンパク質にも存在する.ヘム鉄はFe 2+(還元型)とFe 3+(酸化型)が存在し,これらが可逆的に変換することにより電子伝達を可能にしている.(理化学研究所放射光科学総合研究センター杉本宏)ヘムセンサーHeme Sensor細菌やヒトを含めて多くの生物がヘムセンサーと呼189