ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4

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概要

日本結晶学会誌Vol59No4

擬似的微小重力環境の設計と結晶化図5擬似的微小重力環境でのタンパク質結晶成長と磁場配向.(Proteincrystalgrowthandmagneticorientationunderquasi-microgravity conditions.)(a)mKO,(b)ZPαβ.スケールバーは200μm.図6X線回折強度データの比較.(X-ray diffraction data comparisons.)(a)mKO,(b)ZPαβ.Controlは通常重力条件下,Magnetは擬似的微小重力条件下で得られた結晶に関するデータ.由来する磁気的な異方性が考えられており, 23)mKO結晶が磁場配向を示したのは,ペプチド結合面が揃うβバレル構造の存在に起因すると考えられる.また,擬似的微小重力環境での結晶成長その場観察から,結晶化開始から約12時間までは溶液に何の変化も見られないが,その後,約8時間で微結晶の生成から結晶成長まで急速に進行することがわかった(図5a).亜鉛プロテアーゼZPαβについては,通常は針状あるいは四角柱状の結晶が水平方向に長く成長するが,擬似的微小重力環境においては四角柱状結晶の長辺が磁場の向きと平行になるように,磁場配向することがわかった(図5b).このときの配向軸は正方晶系の空間群P4 32 12に属するZPαβ結晶のc軸であった.また,対照実日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)験で得られた結晶と比較すると,擬似的微小重力条件下で得られた結晶のほうが太くなることがわかった.これは磁場配向によって結晶成長のパターンが変化したためと考えられる.ZPαβの結晶は,結晶化開始から約24時間で微結晶の生成が確認され,その後約24時間かけて結晶が成長した(図5b).3.3 X線回折実験・構造解析結果対照実験および擬似的微小重力環境で得られた結晶について,mKOでは6つずつ,ZPαβでは4つずつX線を照射して回折強度データを取得した.処理したデータを統計的に評価した結果,通常重力条件下で得られた結晶に比べて擬似的微小重力条件下で得られた結晶のほうが,良い数値を与える傾向があることがわかった(図6).185