ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4
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日本結晶学会誌Vol59No4
キナーゼを標的とした構造生物学および創薬の現状図1典型的なキナーゼドメインの構造.(Structure oftypical protein kinase.)protein kinase A(PKA)(PDB: 4hpu)の構造から作図した.ここで示した,へリックス,ストランド,部位の名称は一般化されている.活性制御および阻害剤の結合にかかわる領域を黒く表示している.なお,N-lobeにあるαCへリックスのN末端に隣接するへリックスはほとんどのキナーゼに保存されていない.図3キナーゼの背骨構造.(Spines in kinase structure.)キナーゼの活性構造は疎水性アミノ酸からなる,2本の背骨構造(R-spine,C-spine)で安定化される.構造柔軟性が高いキナーゼ分子は,活性構造形成に伴ってR-spineが完成し,ATPのプリン環が上下2つに分かれたC-spineを1本につなぐ.図2キナーゼの活性中心の構造と反応機構.(Reactioncenter of kinase.)活性型構造では,ATP分子のリン酸基が活性制御リシン,マグネシウムイオンで固定される.基質タンパク質の水酸基がC-loop上のアスパラギン酸にプロトンを引き抜かれて活性化し,ATPγリン酸基のリン原子を求核攻撃することで酵素反応が起こる.までと定義される(それぞれ,多少変異がある).DFGモチーフのアスパラギン酸はマグネシウムイオンを介してATPの結合に関与する(図2).A-loopは活性化に伴って,αCへリックスを活性中心のほうへ引き寄せ,同へリックス上のグルタミン酸とβ5ストランド上の活性制御リシンとの塩橋形成を完成させる(図2).ここで固定日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)化された活性制御リシンは,リン酸基との相互作用を介してATPの遷移状態コンホメーションの優先的結合を可能にする.さらにA-loopは基質結合のプラットホームとして働く.A-loopの立体配置はSTKおよびTKで大きく異なるが,リン酸化を受ける水酸基,catalytic loop(C-loop),DFGモチーフおよびATPの相対位置はすべてのキナーゼで保存されている(図2).この配置が調うと,基質の水酸基はC-loop上のアスパラギン酸にプロトンが引き抜かれて活性化し,ATPのγリン酸基のリン原子を求核攻撃する(図2).また,2つの疎水性クラスターからなる背骨構造(regulatory-spine(R-spine),catalytic-spine(C-spine))が柔軟性の高いキナーゼ構造を安定化する(図3).活性化に伴い,αCへリックスが活性部位に近づくことで,同へリックス内の疎水性アミノ酸側鎖の配向が変化してR-spineが完成する.DFGモチーフのフェニルアラニンもこれに加わっている.一方,はじめ2つに分かれているC-spineは,ATPのプリン環が加わることで1本の背骨構造となる(図3).逆に,これら背骨構造が完成しないとキナーゼ構造は柔軟性が高くなる.これは,ATP類縁体やATP拮抗阻害剤を存在させると,キナーゼ分子の結晶化が促進するという事実と一致する.キナーゼ分子の触媒キナーゼドメインのN末端側およびC末端側には,長さ,配列において多様性の高い領域が備わっている.これらの領域には,活性制御タンパク質結合ドメイン,基質結合を補助するドメイン,細胞内175