ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4

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概要

日本結晶学会誌Vol59No4

不均一アモルファス一酸化シリコン(SiO)構造の精密構造解析ここでは,上述のオングストロームビーム電子回折に関して統計的な解析を行うため,HAADF-STEM像中の明・暗領域およびその界面からそれぞれ20程度のパターンを取得し,それらを積算して一次元プロファイルとしたものを図7に示す.これは空間的に分離されたS(Q)に近い情報であり,S(Q)との比較によるピーク位置の議論は可能である.明・暗領域から得られた強度プロファイルのFSDPの位置はそれぞれアモルファスSi・SiO 2のFSDP位置と一致していることがわかる.さらに,界面(a)(a’)60.0(b)(b’)図6結晶およびアモルファスSiの電子回折パターン.(ElectrondiffractionpatternsfromcrystalandamorphousSi.)(a)結晶Siおよび(b)アモルファスSiの構造モデル.(a’)および(b’)はそれぞれのモデルから計算された電子回折パターン.から得られたプロファイルは明・暗領域とは異なる特徴的な形状を示し,特にFSDPはSiおよびSiO 2のギャップを埋める位置に観察された.また,SiO 2のFSDP位置よりも高角側に2つ目のピークがあり,これもX線散乱のS(Q)と矛盾がない.これらのことから,X線散乱で得られたS(Q)はこれら3つの領域からの成分が足し合わされたものとして理解することが可能である.4.4不均一アモルファスSiOの構造モデリング次に,STEM像,EELS,およびオングストロームビーム電子回折により得られた局所情報をもとに,大域情報である放射光X線散乱の構造因子S(Q)を満たすSiO構造のモデリングを行った.まずアモルファスSiO 2モデルの中心をくり抜き,そこに球形のアモルファスSiモデルを埋め込む.アモルファスSiのサイズはSTEM像で得られた明領域のサイズと同等であり,構造モデル全体の密度や組成は実験値に合わせている.また,この段階では界面構造が不安定であると考えられるので,可変電荷ポテンシャルを用いたMD計算によって界面の緩和を行った.この段階でS(Q)は実験をおおまかに再現できるものとなったが,より完全な構造を得るためにRMC計算を使って実験で得られた構造因子S(Q)にフィットさせ,最終構造モデルを得た.図8aには最終構造のモデル図,図8bには実験およびモデルから得られたS(Q)の比較を示している.両者のS(Q)は非常に良い一致を示し,局所・大域両方の構造情報を同時に満たす構造が得られていることがわかる.この構造モデル中に存在するSiの配位構造を調べたところ,図8cに示すようにSi-4Siおよび(a)(b)o1.60 A -1S(Q)Normalised intensity / arb. unito2.00 A -1o1.75 A -1o2.20 A -1o1.60 A -1o2.05 A -1SiO 2Si(c)Fraction / %oQ / A -10 2 4 6 8oQ / A -1Atomic coordinate図7アモルファスSiOのHAADF-STEM像における図8アモルファスSiOの最終構造モデル.5)(Final structure明・暗領域および界面から得られた局所電子回model for amorphous SiO.)(a)最終的に得られたア折パターンの積算強度プロファイル.5)(AverageモルファスSiOの不均一モデル,(b)実験およびモintensity profiles obtained from bright, dark, and interfaceデルから計算されたX線構造因子S(Q),および(c)regions in HAADF-STEM image of amorphous SiO.)構造モデルに存在するSiの配位構造とその割合.日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)163