ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4

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概要

日本結晶学会誌Vol59No4

ミラー指数,ラウエ指数と消滅則図11 4回螺旋操作(左)とその軸への投影.実格子では?の周期が見えるので逆格子では4倍の周期が見える.その4回螺旋軸への投影である.この投影では[001]方向からの見かけ上の周期は?になる.逆空間では[001]*方向の見かけ上の周期は4倍に見えるので回折図形に00l:l=4nという消滅則が現れる.同様な考え方でほかの生成操作である螺旋操作の影響も簡単に導ける.・2 1,42,63という螺旋操作が生成操作であれば回折図形の半分の反射が消える.対称方向がcなら消滅則は00l:l=2nとなる.・3 1,32,62,64という螺旋操作が生成操作であれば回折図形の?の反射が消える.対称方向がcなら消滅則は00l:l=3nとなる.・4 1,43という螺旋操作が生成操作であれば回折図形の?の反射が消える.対称方向がcなら消滅則は00l:l=4nとなる.・6 1,65という螺旋操作が生成操作であれば回折図形の???の反射が消える.対称方向がcなら消滅則は00l:l=6nとなる.なお,螺旋操作は対称操作なので格子の対称方向にしか存在しない.慣用単位胞を利用すればその対称方向は決定しているので消滅則が現れる逆格子方向も決まっている.6.4異なる対称要素の共存一定の対称方向に異なる対称要素が共存する空間群タイプが存在する.単斜晶系と直方(斜方)晶系の場合は複合格子の時のみだが正方晶系以上においては単純格子の場合もある.これらの対称操作は別の対称操作の組み合わせで出現するものなので独立な消滅則を起こさない.いくつかの例を挙げると理解しやすい.ここでは拡張ヘルマン・モーガン記号を利用するがその記号に関しては文献1)を,共型空間群タイプと非共型空間群タイプ日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)の相違に関しては文献2)を参考にしていただきたい.第65番の空間群タイプはC m b m a m nという共役空間群タイプなのでhkl:h+k=2nというintegral消滅則しか示さない.映進操作(b ?,y,z; a x,?,z; n x,y,0)からのzonal消滅則と螺旋操作(2 1 x,?,0; 2 1 ?,y,0)からのserial消滅則はintegral消滅則の特別なケースに過ぎないことを確認しよう.・b ?,y,zはt(??0)並進操作とm0,y,z鏡映操作からできるものである.b[100]から期待できるzonal消滅則は0kl:k=2nであるが,それはh=0としたintegral消滅則と一致するので独立な消滅則ではない.・a x,?,zはt(??0)並進操作とmx,0,z鏡映操作からできるものである.a[010]から期待できるzonal消滅則はh0l:h=2nであるが,それはk=0としたintegral消滅則と一致するので独立な消滅則ではない.・n x,y,0はt(??0)並進操作とmx,y,0鏡映操作からできるものである.この場合は同一の幾何的要素x,y,0がmとnの2つの操作を行う.n[001]から期待できる消滅則はhk0:h+k=2nであるが,それはl=0としたintegral消滅則と一致するので独立な消滅則ではない.・21x,?,0はt(??0)並進操作と2x,0,0回転操作からできるものである.21[100]から期待できるserial消滅則はh00:h=2nであるがそれはk=l=0としたintegral消滅則と一致するので独立な消滅則ではない.・21?,y,0はt(??0)並進操作と20,y,0回転操作からできるものである.21[010]から期待できるserial消滅則は0k0:k=2nであるが,それはh=l=0としたintegral消滅則と一致するので独立な消滅則ではない.第63番の空間群タイプはC m b n c m nという非共役空間群タイプである.回転操作は2x,0,0,20,y,?のほかに,2 1 x,?,0,2 1 ?,y,?,2 1 0,0,zおよび2 1 ?,?,zという螺旋操作が存在する.b[100],n[001],21[100]および21[010]は上記の第65番空間群タイプと同様な結論になる.・n x,?,zはt(??0)並進操作とcx,0,z映進操作からできるものである.n[010]から期待できるzonal消滅則はh0l:h+l=2nである.しかし,h+k=2nというintegral消滅則にk=0を置くとh+0=2nとなり,hは偶数の場合のみ反射が観測されるという結論になる.この結果をh0l:h+l=2nに入れるとh0l:l=2nと同じ結論になる.後者はc[010]映進操作からの消滅則と一致する.・a x,?,zはt(??0)並進操作とmx,0,z鏡映操作からできるものである.a[010]から期待できるzonal消滅則はh0l:h=2nであるが,k=0としたintegral消滅則と一致するので独立な消滅則ではない.・2 1[001]からのserial消滅則は00l:l=2nであるがc[010]映進操作からのzonal消滅則にh=0を置いたのと一致する結果なので独立な消滅則ではない.157