ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4
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日本結晶学会誌Vol59No4
ネスポロマッシモ垂直な方向に乗っている格子点の座標はa 1軸では7,a 2軸では5である.ウェバー指数はブラべー・ミラー指数と同じく[3140]となり,この方向に乗っている格子点との関係は一目瞭然というわけにはいかなくなる.ウェバー指数は材料科学や透過電子顕微鏡の世界で使われているが結晶学では滅多に利用されていない.演習問題3ある六方格子の結晶面のミラー指数は(120)である.それに垂直な格子方向は[450]である.ブラベー・ミラー指数とウェバー指数を示せ.4.ラウエ指数回折実験の結果として,反射強度とその回折方向の情報が得られる.そして,格子定数が決定できれば,その方位行列から反射の指数付けができる.その反射指数のことを「ラウエ指数」という.ラウエ指数はミラー指数と厳密な関係をもっているが同じものではない.ブラッグの法則を思い出そう.3)nλ= 2d hklsin ? hkl(4)d hklは結晶面族の間隔,?は結晶面と回折線がなす角度,λは波長,nは整数である.このnは回折次数という.同じ結晶面族において反射が強め合う条件の違いは回折次数で表される.図8は一次元周期の原子配列を示す.各原子は入射する平面波を散乱し,二次球面波の源となる.その二次球面波は特定の方向では位相が揃い回折強度が観測できるが,それ以外の方向では位相が揃わないため回折強度が観測できない.位相が揃う時は,隣の原子からの散乱が波長の整数倍で異なっている.その差が波長n個分の場合はn次の回折であるという.三次元でも同様に理解できる.(hkl)面に乗っている原子からの反射はnh,nk,nlというラウエ指数で示すことができ,nは正に回折次数のことである.したがって,ミラー指数とラウエ指数の相違は以下のようにまとめることができる.1.ミラー指数は基底の選択に依存し,単純単位胞を選択すると互いに素であるのに対して,ラウエ指数ではその制限はない.nh,nk,nl反射は(nh nk nl)という「偽造」結晶面から現れるという解釈を時々目にするが物理的に意味のない表現である.2.ミラー指数は無限枚の結晶面の「族」の方向を意味するため括弧の中に書かれるのに対してラウエ指数は各々の反射を指定するので括弧が付かない.自動指数付けのソフトエウエアは勝手に括弧を付けることが多いが誤りである.実格子の(hkl)結晶面の法線ベクトルは逆空間に常に存在し,そのベクトルは逆格子の方向を定義する.その方向の指数は[hkl]*であり,それに乗っている逆格子点図8一次元周期の原子配列と入射する平面波.各原子が入射波を散乱し,二次球面波の源となる.その二次球面波は特定の方向で位相が揃い強度が観測される.位相が揃う時は,隣の原子からの散乱が波長の整数倍で異なっている.そして,その差がn波長の場合はn次の回折という.図はn=0~3までの例を示す(文献12)を参照).はnh,nk,nl(nは整数)という座標をもっている.nh,nk,nl反射は逆格子のnh,nk,nl格子点と一致するため逆格子点の座標はラウエ指数と一致する.演習問題4ミラー指数およびラウエ指数の定義に注意して936というラウエ指数の反射を議論せよ.5.基底の変換による指数の変更文献1)で説明したように,基底の変換によって空間群のヘルマン・モーガン記号が変わるが,結晶構造の記述にも影響がある.その影響を理解するためには共変性と反変性の概念が必要である.(abc)という基底に対するあるベクトルrの座標を(x/y/z)とする.*2基底を固定しベクトルを反時計周り?角度で回転すればr'ベクトルが得られ,その座標を(x'/y'/z')と表現する.逆にベクトルを固定し,基底を時計回り?角度で回転すれば(a'b'c')が得られる.なお,基底の変換を表現する行列をPとすると,座標の変換は以下のようになる(Iは単位行列である).r xa yb zc abc x/y/z abc I x/y/z?abc PP1 x/y/z a’b’c’x’/y’/z’= + + =( )( )=( ) ( )=( ) ( ) = ( )( )座標は基底と逆変換となるため,反変性であると言う.反変性質をもっているパラメーターは座標,方向の指数と逆空間の基底であり,それぞれ列ベクトル(x/y/z),(u/v/w),(a*/b*/c*)と書く.共変性質をもっているパラメーターはミラー指数とラウエ指数であり,行ベクトル(hkl)と書*2文献1)に従って,(abc)は行ベクトル,(x/y/z)は列ベクトルを意味する.154日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)