ブックタイトル日本結晶学会誌Vol59No4

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概要

日本結晶学会誌Vol59No4

ミラー指数,ラウエ指数と消滅則図2 abc基底に対するpqr切片をもつ結晶面.図4(ア)oC格子を慣用(複合)単位胞で記述すると格子面(グレー色)のミラ-指数はh+k=2nという制限に従う.(イ)同じ格子を単純(非慣用)単位胞で記述すると格子面のミラ-指数に制限はない.図3直方(斜方)晶系での(h00)結晶面族.太い線は面,薄い線は慣用単位胞.(ア)oPの場合は第1面のa軸との切片は1なのでミラー指数は(100)となる.(イ)oCの場合は第1面のa軸との切片は?なのでミラー指数は(200)となる.hx + ky + lz = m(2)式(2)は式(1)を書き直したものにすぎないが,今度はmを定数ではなく,整数の媒介変数にするとこの式は無限枚の結晶面を指定する.これらの面はすべて同じ方向をもつため同一の「族」(family of lattice planes)と解釈できる.各々の面の位置はmの値によって決まる.m=0の場合はその面は原点を通る.また,m=1の場合は正の方向の第1面となる.面のミラー指数と軸との切片の関係を考えよう.a軸との切片はp番目の格子点なので,p=pqr/qr=m/hの関係式が成り立つ.したがって第1面の場合はa軸との切日本結晶学会誌第59巻第4号(2017)片は1/hである.同様に,b軸とc軸との切片はそれぞれ1/k,1/lとなる.結論として,ミラー指数はワイスパラメーターの逆数となる.なお,結晶面がある軸に平行な場合はミラー指数は1/∞=0なのでワイスパラメーターより扱いやすい表記となる.上記の定義は一般に知られているにもかかわらずミラー指数の制限に関して誤解が多い.特に,ミラー指数は互いに素であると多くの教科書,論文などに書いてあるが,実はそれは単純単位胞の場合のみ一般的な規則である.具体的な例を挙げるとその理由は明快である.図3は直方(斜方)単位胞の[001]方向投影である.(ア)はoP(単純単位胞),(イ)はoC(ab面の底心単位胞)の投影を示す.bcベクトルを含む格子面のミラー指数はk=0とl=0なのだが,hは原点を通る次の面のa軸との切片の逆数である.oPの場合はその面は100格子点を通るためh=1となる.しかし,oCの場合は100格子点を通るのは第1面ではなく,第2面である.第1面は??0格子点を通るのでa軸との切片は?であり,hミラー指数は1/(?)=2となる.要するに,bcベクトルを含む格子面のミラー指数はoPの場合は(100),oCの場合は(200)となる.すなわち,ミラー指数は互いに素であると考え(100)と表記するとoCの場合はミラー指数の定義そのものと矛盾してしまう.当然ながら同じ格子を別の単位胞で表現するとミラー151