ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No4

ページ
53/62

このページは 日本結晶学会誌Vol58No4 の電子ブックに掲載されている53ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol58No4

会報/カレンダーされる以前は,水素分子などがナノ細孔内のどの位置にどのような形態で吸着されているか,合理的な材料開発において重要な構造情報がほとんど得られていなかった.久保田会員の先駆的で独創的な構造研究の成果は,世界中の多孔性配位高分子の研究者に大きなインパクトを与え,詳細な構造科学情報に基づく多孔性配位高分子のサイエンスを展開する気運を高め,研究分野の飛躍的な発展の道を拓いた.また,久保田会員のその場観察法を駆使した先駆的な研究以降,放射光を用いたその場観察法の本格的な普及が進み,今日ではSPring-8などでの材料開発における必須技術となっている.以上の久保田会員による,その場観察法を駆使した多孔性配位高分子に吸着した小分子の結晶構造に関する一連の研究業績は,日本結晶学会学術賞に相応しいものである.日本結晶学会学術賞「生体エネルギー変換にかかわる生体超分子複合体の構造研究」栗栖源嗣会員栗栖源嗣会員は,生体エネルギー変換に関連する生体超分子複合体の構造研究を精力的に推進してきた.光合成電子伝達タンパク質フェレドキシンとフェレドキシンNADP+還元酵素との過渡的な弱い相互作用に基づく複合体状態での結晶化に世界に先駆けて成功したことを端緒とし,その後,光合成の明反応で働く膜タンパク質複合体のうち,立体構造解明が最後まで不明のまま残されていた超分子複合体であるタンパク質シトクロムb 6f複合体の構造解析に成功した.これにより,プラストキノンがかかわる非循環電子伝達機構について初めて構造に立脚した議論が可能となった.また,これまでその存在が確認されていなかった新規ヘム鉄を見出し,このヘムがフェレドキシン依存性循環電子伝達経路に関与している可能性を示した.さらに,光合成に必須のクロロフィル合成を担うプロトクロロフィリド(Pchlide)還元酵素のうち,暗所作動型還元酵素(DPOR)の触媒コンポーネントであるNBタンパク質の構造を明らかにした.新規な鉄イオウクラスター[4Fe-4S]を見出し,これが介在するPchlide還元の反応機構を提唱した.また,ニトロゲナーゼと類似した全体構造から,DPORとニトロゲナーゼに共通の構造基盤が存在することを示した.一方,ATPに依存して微小管上を滑り運動するモータータンパク質である細胞質ダイニンのモータードメインの構造決定に成功した.細胞性粘菌に由来する細胞質ダイニンについて,分子量38万の野生型モータードメインを3.8 A分解能で,また,ATPase活性化状態の構造をもつ微小管結合部位を欠損した変異型モータードメインの構造を2.8 A分解能で決定した.これらの構造に基づき,ダイニンが微小管上を移動する運動メカニズムについて,従来考えられてきたモデルとは異なり,AAA+リングの表面に位置する日本結晶学会誌第58巻第4号(2016)α/βサブドメインがリンカーのスイッチング運動を駆動する分子装置であるとする新しい機構の提案を行った.さらに,微小管結合部位とAAA+リング間との情報伝達経路について,AAA+リングの裏面に位置するCシークエンスの重要性を示し,ストーク,ストラットとともにCシークエンスが機能するとする新しい運動モデルを提唱した.いずれの研究も生物学的に重要な課題であったが,それらの構造研究は大きな困難に直面していた.栗栖会員は,遭遇する困難に果敢に挑戦し,着実にこれを克服することによって,プロジェクト全体をリードして画期的な成果をもたらした.以上の栗栖源嗣会員の研究業績は,タンパク質結晶学の分野において高い評価に値するとともに,構造生物学分野の今後のさらなる発展につながるものであり,日本結晶学会学術賞に相応しいものである.カレンダー会期会合名称会場主催団体/連絡先/URL2016年9/3-59/7-9第19回XAFS討論会名古屋大学野依記念学術交流会館「知の拠点」あいちシンクロトロン光センター第29回日本セラミックス協会秋季シンポ広島大学(東広島ジウム特定セッションキャンパス)「先進的な構造科学と分析技術」9/28-30第52回熱測定討論会10/26-28第52回X線分析討論会徳島大学常三島キャンパス筑波大学東京キャンパス文京校舎10/26-29第57回高圧討論会筑波大学大学会館11/17,18日本結晶学会平成28年度年会および総会茨城県立県民文化センター日本XAFS研究会第19回XAFS討論会実行委員会E-mail: shushi@apchem.nagoya-u.ac.jp日本セラミックス協会http://www.ceramic.or.jp/ig-syuki/29th/日本熱測定学会http://ostwald.naruto-u.ac.jp/ ~ jccta52/(公社)日本分析化学会X線分析研究懇談会http://www.nims.go.jp/xray/xbun/index.htmhttp://www.nims.go.jp/xray/xbun/X52/日本高圧力学会http://www.highpressure.jp/new/57forum/日本結晶学会http://www.crsj.jp/activity/annualMeetings/nenkai201612/4-7 AsCA’16 Hanoi, Vietnam http://www.asca2016.org/12/7-9第43回炭素材料学会年会千葉大学けやき会館炭素材料学会http://tanso.org/contents/event/conf2016/205