ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No4

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概要

日本結晶学会誌Vol58No4

クリスタリット結晶カイラリティCrystal Chiralityトポロジー分析Topological Analysisトポロジー分析とは分子構造あるいは結晶構造を点および線によって二次元または三次元ネットワークへと簡略化し,その点と点のつながり方に基づいた分類をすることをいう.定義の異なる主に4種類の表記法(Schlafli表記,vertex表記,point表記,face表記)が用途に応じて併用される.特にvertex表記とpoint表記は複雑なネットワークに対しても汎用性が高く,いずれも任意の点から出発して戻ってくるまでの最短経路の通る点あるいはその種類の数え上げに基づいている.近年では金属有機構造体(Metal Organic Framework:MOF)や多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer:PCP),あるいは金属有機多面体(Metal Organic Polyhedra:MOP)やゼオライトのような配位結合によって連結された高次構造の分類に用いられ,ToposProというソフトによってトポロジー分析が容易に行われるようになった.(大阪大学大学院理学研究科小島達弘)RCSRデータベースRCSR(Reticular Chemistry Structure Resource)DatabaseRCSRデータベースとは点と点のつながり方に基づいたトポロジー分析によって分類された二次元あるいは三次元ネットワークのデータベースのことである.結合数や点・線・面の種類の数などによる絞込みが可能であり,ネットワークトポロジーの照合に利用される.構造の特徴や代表的な化合物名に由来するアルファベットの小文字3文字をベースとして表記される(例:dia(diamond),hcb(honeycomb),など).近年では金属有機構造体(Metal Organic Framework:MOF)や多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer:PCP),あるいは金属有機多面体(Metal Organic Polyhedra:MOP)やゼオライトの高次構造の参照データベースとして引用される.ToposProによって分析されたネットワークも自動的に照合される.(大阪大学大学院理学研究科小島達弘)日本結晶学会誌第58巻第4号(2016)われわれの右手と左手は互いに鏡像の関係にあり,両者は鏡に映さない限り決して重なり合わない.このような性質のことをカイラリティ(あるいはキラリティ)と呼び,また,その性質を有する物体をカイラル(キラル)であると言う.自然界にはカイラルな物体が多数存在し,それらのカイラリティを生み出す構成要素は多種多様である.このうち,結晶における原子の配列によるカイラリティをしばしば結晶カイラリティと呼ぶ.結晶カイラリティの有無は,n回回転(n=1,2,3,4,6)とそれに垂直な平面での鏡映の組み合わせによるn回回映操作の有無によって判定され,対称要素として回映軸をもたない結晶構造のみがカイラリティを有する.結晶構造の対称性を記述する全230種の空間群のうち,65種が回映軸をもたないカイラルな空間群である.(大阪大学大学院基礎工学研究科木村健太)コヒーレントX線Coherent X-raysコヒーレントX線とは,位相が揃っていて干渉性を示す(コヒーレントな)X線のことである.通常コヒーレントな領域は有限であり,ビームの進行方向に沿った長さを時間コヒーレンス長,直交方向の長さを空間コヒーレンス長という.散乱実験の場合には,X線のビームサイズが空間コヒーレンス長と同程度かそれよりも小さく,散乱の際の経路差が時間コヒーレンス長と同程度かそれよりも小さくなるような散乱角の条件で,コヒーレンスによる実験結果への影響が顕在化し始め,例えば散漫な小角X線散乱像が粒状のスペックル像となる.(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻篠原佑也)NudixファミリーNudix FamilyNudixとはnucleoside diphosphate linked to moiety Xの略である.すなわちヌクレオシド二リン酸代謝物を基質とし,そのリン酸結合を加水分解するタンパク質酵素のファミリーを指してNudixファミリーと称する.ヌクレオチド代謝経路で生成されるNADH,ジヌクレオシドポリリン酸,糖ヌクレオチド,デオキシリボヌクレオシド三リン酸などを無害化もしくは再利用できる要素へと分解する.真正細菌,古細菌,真核生物のすべてのドメインに広く分布していることが確認されており,活性部位には保存されたアミノ酸配列[GX 5EX 7REUXEEXGU:UはIle,Leu,Valのいずれか,Xは任意のアミノ酸を指す]を有する.(自然科学研究機構分子科学研究所協奏分子システム研究センター古池美彦)195