ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No4

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概要

日本結晶学会誌Vol58No4

二次元および三次元ネットワークのトポロジー分析とその表記法一般的に配位結合部位や配位子は分かれ道となりやすいので1つの交点と見なされることが多い.以上の簡略化が正しく行われていれば,(v)最後にトポロジーの解析を行い,トポロジー表記を出力する(ADS,Classification).以上のような流れでトポロジーが解析されるが,ToposProはその操作が非常に複雑であるために操作ミスのためしばしば間違った分析結果が出力される.ToposProを用いずに三次元ネットワークのトポロジーを分析するのは骨が折れるが,分析結果を基に先述のルールに従って,得られたトポロジー表記が正しいかどうかの判別は余程複雑な構造でなければ不可能ではないので自ら三次元ネットワークをよく観察して確認することを推奨する.図17ケプラレート型球状ポリ酸Mo132([Mo VI 72Mo V 60O 372(CH3COO)30(H2O)72]42?)の構造の簡略化と各種トポロジー分析.(Simplification and topological analysisof Keplerate-type spherical polyoxometalate, Mo132([Mo VI 72Mo V 60O 372(CH 3COO)30(H 2O)72]42?).)22)5.RCSR:Reticular Chemistry Structure ResourceToposProによってトポロジーが解析されても,vertex表記やpoint表記は非常に複雑であるために.これらの表記法から構造を理解することは困難である.ToposProは解析されたトポロジーをRCSRデータベースに登録されている構造と照合する.RCSRデータベースでは化合物名などに由来する三文字のアルファベットによる略号が登録されておりそれぞれの分類に対して簡略化された図が作成されているので,近年では簡単につながりの数だけ示した(p,q)-c netと記載してRCSRデータベースの略号を参照するのが一般的となっている.RCSR内における命名法はさまざまであり,代表的化合物に由来するもの(例:srs:SrSi,cds:CdSO 4等)や,構造の特徴に由来するもの(hcb:honeycomb構造,kgm:kagome構造,等)などが主である.同一のトポロジーで重なり方や交わり方が異なると-a,-bなどとしてアルファベット順に新規構造が報告された順に割り当てられる.例えばdiaという略号を含み同一のトポロジーで表記されるネットワークを検索すると,報告された順にdia,dia-c,dia-c3*,dia-c4,dia-c6という異なる計5種類のネットワークが見つかる.また,RCSRデータベースでは条件を,Keywords,Modifiers,Coordination,density,td10,genus,kinds of vertex,kinds of edge,kinds of face,kindsof tile,space group number,smallest ring,order,Dsizeのように絞り込むことで,対応するネットワークを見つけ出すことが可能であるので,例えToposProによるトポロジー分析ができなかったとしても,構造の簡略化さえ正しく行うことができれば,自分のネットワークがどの表記に対応するかを見つけ出すことが可能であるという利点がある.6.例以上のように,それぞれのトポロジー表記における定義およびルールを解説した.以下に実際の代表的な分子の結晶構造に関して,以上のルールに則った構造の簡日本結晶学会誌第58巻第4号(2016)図18MnL2n型球状錯体の構造の簡略化と各種トポロジー表記.(Simplification and topological analysis ofM nL 2n spherical complexes.)23)-25)図19 HKUST-1の構造の簡略化と各種トポロジー表記.(Simplification and topological analysis ofHKUST-1.)26)略化およびトポロジー表記を示す(図17~図19).7.最後に本解説では,これまで日本語による解説が少なかったトポロジーに基づいた表記法の理解のために,トポロジーの定義をできるだけ詳細に図を交えながら解説した.読者にはまず実際に報告されている二次元あるいは165