ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No4

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概要

日本結晶学会誌Vol58No4

小島達弘すると,vertex表記はそれぞれの角からの最短経路(ring)A,Bとなる経路の数a,bを数えるのに対して,point表記は最短経路(cycle)A,Bとなる角の数a,bを数える.Database of Zeolite Structures 17)に登録されているゼオライトコードでSODと表記されるゼオライトはvertex表記では4.4.6.6.6.6と表記され,point表記では4 2 .6 4と表記される.また硫酸カドミウムの構造はvertex表記では6.6.6.6.6 2.*と表記され,point表記では6 5 .8と表記される.いずれも良い例であるので,図14を参考に読者自ら考察して欲しい.3.2.7 face表記:[A a .B b…]多面体およびタイリングに対して一般的に用いられる.[A a .B b…]:A角形の面がa枚,B角形の面がb枚ある.複数種の多面体が存在する場合はそれらの比p :q:…を[A a .B b…]p[A a .B b…]q…と表す.図7左に示した立方八面体は正三角形が8枚と正四角形が6枚からなる多面体であるので,[3 8 .4 6]と表記される.同様に図7中央の立体は[3 4 .6 4]と表記される.図15は単位格子内に[4 8 .8 2]で表記される多面体が6個と[4 12 .6 8 .8 6]で表記される多面体が2個であるので,それぞれの比から[4 8 .8 2]3[4 12 .6 8 .8 6]と表記される.以上のようにそれぞれの表記法の細かい定義や簡単な例を示した.これらのルールに正しく従えばトポロジーに基づいた表記が可能となる.しかしながら隣り合う交点との連結の数が6を超えると,あるいは交点の種類が複数になると,実際にその経路や角あるいは面を手動で正しく数え上げることは非常に困難である.また,実際の結晶構造では例えば同一のフレームワークが相互貫入した構造や積層した構造など,トポロジー表記のみでは表現できない構造も多い.そこで結晶構造からネットワークのトポロジーを分析し,各定義に則った表記法の提示とデータベース(RCSR:ReticularChemistry Structure Resource)18)との照会をするソフトウェア(ToposPro)が広く利用されている.19)-21)4.ToposPro本解説ではToposProを用いて各種ネットワークのトポロジーの解析および表記法を示すための基本操作の簡単な仕組みのみを記す.ToposProで主に実行するのは以下の4つの操作である(図16).(i)まずは結晶データを読み込むことから始める(import).しかし原子座標を読み込むだけで結合に関する情報はいっさいないため(この段階では全原子が結合数0となる),(ii)それらの原子が互いにどのように結合しているのかを決定する(AutoCN).原子間距離から主には共有結合や配位結合を認識する.必要に応じて水素結合などを認識させることも可能である.(iii)次に分子の省略が行われるが,前述のとおりトポロジー表記においては結合数が3以上のものを交点と見なすため,結合数n=0と見なされる孤立水分子や,n=1と見なされる芳香環やアルキル鎖上の水素原子,および溶媒分子などが省略される(Auto determine,simplify adjacencymatrix).次に同様の理由で結合数n=2となる炭素鎖などは一本の直線として簡略化される.ここまでは一様に簡略化されるが,その先の構造をどのように簡略化するかは解析者の解釈次第となるので注意深い考察が必要となる(ADS,save simplified net)(iv).MOFやPCPでは図14sodおよびcdsの構造およびvertex表記とpoint表記.(The structure, vertex and point symbols for sodand cds.)図15 face表記による例.(The example of the face symbol.)図16 ToposProによるトポロジー解析の手順(a)結晶データの読み込み(b)各原子の連結(c)構造の省略(d)構造の簡略化およびトポロジー表記の出力.(Process of topological analysis by ToposPro.(a)Import crystal data.(b)Make chemical bond.(c)Omitatoms.(d)Simplify structure and output topologicalanalysis.)164日本結晶学会誌第58巻第4号(2016)