ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No3

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概要

日本結晶学会誌Vol58No3

日本結晶学会誌 第58巻 第3号(2016) 153クリスタリット励起エネルギー移動Excited Energy Transfer,EET光化学系I,光化学系IIなどの光化学反応では,スペシャルペアと呼ばれるクロロフィル二量体が光エネルギーを吸収して励起されて電荷分離反応を起こす.このエネルギーはスペシャルペアの周辺に存在している,集光アンテナタンパク質内のクロロフィルが供給する.集光アンテナタンパク質内のクロロフィルは光エネルギーを吸収して励起され,この励起エネルギーは近接するクロロフィルへと受け渡されていく.この励起エネルギーの受け渡しをExcited Energy Transfer,EETと呼ぶ.(岡山大学大学院自然科学研究科 菅 倫寛)赤色クロロフィルRed Chl生体内の通常のクロロフィル(Chl)が670 から680 nm付近に吸収を示すのに対して,光化学系Iの反応中心ではスペシャルペアと呼ばれるChlの二量体を形成しており,700 nm付近に吸収を示すことからP700と呼ばれている.反応中心以外の光エネルギーを吸収したChlは励起され,この励起エネルギーは近接するChlに受け渡され,スペシャルペアへと導かれる.光化学系I には700 nmよりも長い波長領域(低いエネルギー準位)での吸収を示すChl が存在しており,これをRed Chlと呼ぶ.Red Chlは光化学系Iにおいてエネルギー準位が最も低いため,光エネルギーの捕捉に重要な役割を担っている.(岡山大学大学院自然科学研究科 菅 倫寛)超複合体Supercomplexタンパク質の中にはポリペプチドだけでなく,金属イオン,ヘム,クロロフィルなどの補因子を含んで機能しているものも多く,また複数のポリペプチドからなるいくつかのサブユニットが四次構造をとって巨大な複合体として機能しているものも多い.これらのタンパク質はタンパク質複合体と呼ばれるが,呼吸鎖や光合成などでは生理的条件下において,複合体同士がさらに複合体を作ることがあり,これを超複合体と呼ぶ.(岡山大学大学院自然科学研究科 菅 倫寛)S- 状態遷移モデルS-State CyclePSIIの酸素発生中心はS0からS4までの5つの反応中間体状態が存在しており,S1 状態は反応開始状態として暗黒条件化において安定に存在できる.スペシャルペアと呼ばれるクロロフィル分子二量体が光エネルギーを吸収して励起され電荷分離反応が起こると,スペシャルペアから飛び出した電子が電子受容体へ受け渡される.この電荷を補うために酸素発生中心の近傍に存在するチロシン残基が酸素発生中心の電子を1 つ引き抜くごとに反応中間体の酸化状態が進展する.S4 状態になると酸素を発生してS0 状態に戻る.(岡山大学大学院自然科学研究科 菅 倫寛)光合成Photosynthesis光合成は植物や藻類,光合成細菌のもつ代謝系であり,太陽の光エネルギーを利用して化学エネルギーに変換する仕組みである.植物や藻類が行う酸素発生型光合成では電子伝達系による一連の反応により,光エネルギーを利用して水を電子供与体とし,ATP やNADPHを作り出している.続くカルビン-ベンソン回路においてこれらATP やNADPHが二酸化炭素を糖へと変換するのに利用される.(岡山大学大学院自然科学研究科 菅 倫寛)原子爆発Coulomb Explosionシンクロトロンにおける放射線損傷は入射X線による光電効果で生じる電子が原因となる.これらの電子は生体試料中の水分子やタンパク質分子と相互作用しラジカルなどの反応性の高い活性分子種を生成する.これら活性分子種は結晶やタンパク質の劣化を引き起こす.一方,X線自由電子レーザーのように大強度X線が一度に試料に照射されると多光子吸収により電子が飛び出すことになる.その結果,原子・分子がクーロン反発で飛び散り,クーロン爆発が起きる.(岡山大学大学院自然科学研究科 菅 倫寛)GLUTGlucose Transporterヒト・哺乳類においてエネルギー源として単糖(グルコース,フルクトース,ガラクトースなど)を細胞内に取り込む機構には,大きく分けて受動輸送と能動輸送の二種類がある.このうち単糖の受動輸送を担う膜タンパ