ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No3

概要

日本結晶学会誌Vol58No3

138 日本結晶学会誌 第58 巻 第3 号（2016）野村紀通，岩田　想を与えるものであり，生活習慣病の予防・治療薬などの開発につながると期待される．2016 年3月の時点で3.5 A以上の分解能でX線結晶構造が報告されたヒト・哺乳類の膜輸送体は上記のGLUTの3 つのサブタイプに加えてヒトBand3（SLC4A1），28）ウシUT-B（尿素輸送体；SLC14A1）29）の計5 種のみである（ミトコンドリア膜輸送体を除く）．ヒト・哺乳類の膜輸送体の結晶構造解析の難度は依然として高い．本稿で述べた抗体フラグメントを用いた結晶化促進・コンフォメーション安定化技術が種々の膜輸送体構造研究の一助となれば幸いである．謝　辞本研究はスウェーデン・ストックホルム大学のDavidDrew博士をはじめとして多くの方々との共同研究として行ったものである．長期間にわたる共同研究者の皆様のご尽力に心から感謝を申し上げる．文　献1） M. E. Bocarsly, et al.: Pharmacol. Biochem. Behav. 97, 101（2010）.2） K. L. Stanhope, et al.: J. Clin. Invest. 119, 1322（ 2009）.3） V. Douard and R. P. Ferraris: J. Physiol. 591, 401（ 2013）.4） C. F. Burant, et al.: J. Biol. Chem. 267, 14523（ 1992）.5） A. Godoy, et al.: J. Cell. Physiol. 207, 614（ 2006）.6） N. Nomura, et al.: Nature 526, 397（ 2015）.7） L. Q. Chen, et al.: Annu. Rev. Biochem. 84, 865（ 2015）.8） M. Mueckler and B. Thorens: Mol. Aspects. Med. 34, 121（ 2013）.9） V. Vallon: Annu. Rev. Med. 66, 255（ 2015）.10） M. E. Bizeau and M. J. Pagliassotti: Metabolism 54, 1189（ 2005）.11） P. J. Havel: Nutr. Rev. 63, 133（ 2005）.12） J. Montonen, et al.: J. Nutr. 137, 1447（ 2007）.13） J. Dyer, et al.: Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver. Physiol. 282,G241（ 2002）.14） C. A. Stuart, et al.: Diabetes Care 30, 925（ 2007）.15） 村田武士, 他：「膜タンパク質」の重要性とその構造が拓く未来, 岩田　想（編）, 膜タンパク質構造研究, 化学同人, p.1（2013）.16） A. J. Venkatakrishnan, et al.: Nature 494, 185（ 2013）.17） E. Chun, et al.: Structure 20, 967（ 2012）.18） 日野智也, 他：膜蛋白質の立体構造を認識するモノクローナル抗体のスクリーニング方法, 特願2009-110994, 2009年4 月30 日.19） 野村紀通：抗体を用いた結晶化, 岩田　想（編）, 膜タンパク質構造研究, 化学同人, p.120（ 2013）.20） Y. Oka, et al.: Nature 345, 550（ 1990）.21） O. Jardetzky: Nature 211, 969（ 1966）.22） D. J. Slotboom: Nat. Rev. Microbiol. 12, 79（ 2014）.23） D. Deng, et al.: Nature 510, 121（ 2014）.24） D. Deng, et al.: Nature 526, 391（ 2015）.25） L. Sun, et al.: Nature 490, 361（ 2012）.26） E. M. Quistgaard, et al.: Nat. Struct. Mol. Biol. 20, 766（ 2013）.27） C. V. Iancu, et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 17862（ 2013）.28） T. Arakawa, et al.: Science 350, 680（ 2015）.29） E. J. Levin, et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 109, 11194（ 2012）.30） 野村紀通, 岩田　想：GLUT5の立体構造とフルクトース輸送機構，門脇　孝（編）, 糖尿病学2016, 診断と治療社, 印刷中.プロフィール野村紀通　Norimichi NOMURA京都大学大学院医学研究科Graduate School of Medicine, Kyoto University〒606-8501　京都市左京区吉田近衛町Yoshida-Konoe-cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501,Japane-mail: nnomura@mfour.med.kyoto-u.ac.jp最終学歴：京都大学大学院農学研究科博士課程修了専門分野：構造生物学，抗体工学現在の研究テーマ：膜輸送体の構造解析，抗体を用いた膜タンパク質の結晶化岩田　想　So IWATA京都大学大学院医学研究科Graduate School of Medicine, Kyoto University〒606-8501　京都市左京区吉田近衛町Yoshida-Konoe-cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501,Japane-mail: s.iwata@mfour.med.kyoto-u.ac.jp最終学歴：東京大学大学院農学研究科博士課程修了専門分野：膜タンパク質の構造生物学，X線結晶学現在の研究テーマ：Gタンパク質共役型受容体の構造解析，X線自由電子レーザーによるタンパク質構造解析