ブックタイトル日本結晶学会誌Vol58No3

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概要

日本結晶学会誌Vol58No3

136 日本結晶学会誌 第58 巻 第3 号(2016)野村紀通,岩田 想ること,それに加えて②TM7およびTM10のヘリックス内部で局所的に構造が変化し,いったん結合したフルクトースを細胞外に逃さず効率的に細胞内に送り込むために2 カ所に「ゲート」が形成されること,が明らかになった(図4).また,外開き状態の構造ではV字型の根元部分(二組の膜貫通ヘリックス束同士が細胞質側で近接している部分)に複数の塩橋が形成されコンフォメーションが安定化されているのに対し,内開き状態の構造ではこれらの塩橋が切断されていた(図5).この塩橋の形成に関与しているアミノ酸残基に変異を導入するとフルクトースのGLUT5への結合が弱まることから,この塩橋は外開き状態の構造を安定化させるだけでなく,フルクトースの結合にも重要な役割を担っていることが示唆された.以上の構造機能相関から明らかになったGLUT5によるフルクトース輸送の分子機構を図6に示した.4.4 分子機構一般に膜輸送体が膜の内外へ基質分子を輸送する7*710* 101* 14 4*細胞外側のゲート細胞内側のゲート図4 外開き状態と内開き状態の立体構造の重ね合わせ比較.(Superimposition of the open outward- andinward-facing structures.)1,7,4,10は外開き状態での各ヘリックスの位置.1*,7*,4*,10* は内開き状態での各ヘリックスの位置.中央のフルクトース分子は変異実験から予想される基質結合部位の位置を表す.文献6),30)より改変して転載.1235 46789101112E400R340R158E151R97R407b 内開き状態123456789101112E400R340R158R407E1512.5A R973.2A3.2Aa 外開き状態図5 膜貫通ヘリックス束間で形成・切断される塩橋.(Formation and breakage of salt bridges between the transmembranehelix bundles.)(a)外開き状態,(b)内開き状態.細胞質側から見た図.塩橋の観察を明確にするために細胞内ヘリックスICH1-5は取り除いて作図した.文献6)より改変して転載.974103ICH5 ICH1-45 1外向き開ICH5 ICH1-497105 1 4 3外向き閉(モデル)1 439 710ICH1-4内向き開ICH1-451 439 710内向き閉(モデル)図6 GLUT5の交互アクセス輸送機構.(Alternatingaccesstransport mechanism in GLUT5.)五角形はフルクトース分子を表す.文献6),30)より改変して転載.