ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No5

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概要

日本結晶学会誌Vol57No5

日本結晶学会誌 第57巻 第5号(2015) 265異常分散X線回折を利用したGaN結晶の極性評価示す.なお,この計算では試料内のX線の吸収は考慮していない.波長の短波長側でGa極性のときとN極性のときの違いがより大きく現れている.特にGaのK吸収端(λ = 1.1958 A)付近ではその違いは顕著である.このように(1011)面と(0002)面を選択すれば,試料を片側からのみの測定で,極性を判別することができる.また,(1011)面は(0002)面とブラッグ角が近く,回折強度も大きいので容易に測定することができる.なお,GaNの極性とは(0002)格子面に対してのGa原子層とN原子層の上下の問題であって,どちらの原子で表面が終端されているかは別の問題である.異常分散X線回折法では極性は評価できるが,表面の終端原子は評価できない.4.実験方法実験は,入射X線の波長を自由に選択できることが必要であるためシンクロトロン放射光を用いて,高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーBL-9C で行った.図6に実験装置の配置を示す.シンクロトロン放射光の白色X線はS(i 111)二結晶分光器により単色化される.結晶の配置はGaのK吸収端の波長1.1958 Aが得られるように設定し,入射X線の波長はNiのK吸収端で補正した.イオンチェンバーで入射強度をモニターした後,X線は試料に入る.回折されたX線は14 mm×10 mmのスリットを通し,NaIシンチレーション計数管で検出した.実験手順は試料をゴニオメータ上に置き,Si(111)二結晶分光器により波長を設定した後1011反射について回折強度曲線をとり,波長を変え再び回折強度曲線をとる.この繰り返しをGaのK吸収端をはさんだ波長30 点について行い,回折強度の入射X線波長依存性を調べた.1011 反射を測定した後,同様に0002 反射について回折強度の入射X線波長依存性を調べた.(1011)面は等価な面が6 つあるためφ 軸により1 つの面を選択し,χ 軸により試料表面と測定面の傾きを調整し,2θ 軸によりシンチレーション計数管の位置を設定した.また,回折強度曲線はω軸により試料をブラッグ角まわりで回転させて測定した.0002 反射を測定する際,試料の異方性を考慮に入れφ軸は1011反射を測定したときの角度と同じ角度に設定した.5.実験結果と解析本稿ではハイドライド気相成長法(HVPE法),有機金属気相成長法(MOVPE法),分子線結晶成長法(MBE法)を用いて作製されたさまざまな試料について異常分散X線回折法により極性判別を行った結果について報告する.試料はいずれもc面のGaN結晶である.5.1 両面試料はじめに本稿で紹介する異常分散を用いた極性判別法がGaNに適用できるかを両面が測定可能な比較的厚い試料(以下,両面試料と呼ぶ)を用いて実験を行った.両面試料(成長の表面側を試料omote,裏面側を試料ura とする)はハイドライド気相成長法(HVPE)により作製されたものである.これはサファイア基板上にMOVPEによりGaNを成長させたうえに,SiO2 のパター図4 Ga極性をもつウルツァイト構造のGaN.(A wurtziteGaN thin film having Ga polarity grown on a substrate.)図5 吸収補正がない場合の強度比の入射X線波長依存性(計算値).(Calculated diffraction intensityratio between 0002 reflection and 1011 reflection.Absorption effects were not included. The solidlines are for Ga-polarity and the dashed lines are forN-polarity.)図6 実験配置.(The schematic view of the experimentalarrangement.)