ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No5

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概要

日本結晶学会誌Vol57No5

274 日本結晶学会誌 第57 巻 第5 号(2015)箕浦真生4.1 Trigonal,Tetragonal,Hexagonal,Cubicのいずれかで,それよりも高い対称性で「見かけのラウエ群の空間群」が示されているとき(図3 参照):TWIN 0 1 0 1 0 0 0 0 -14.2 Rhombohedralの順設定/逆設定のツインと思われるとき,空間群R3 として:TWIN -1 0 0 0 -1 0 0 0 14.3 Tetragonalのように見えるが,実際はa 軸とb 軸の長さが少し違うOrthorhombic であるとき:TWIN 0 1 0 1 0 0 0 0 -14.4 Orthorhombic のように見えるが,実際はβが90 度に近いMonoclinic であるとき(図4 参照):TWIN 1 0 0 0 -1 0 0 0 -14.5 Hexagonal のように見えるが,実際はa ≒ b でかつβが120 度に近いMonoclinic であるとき:TWIN 0 0 1 0 1 0 -1 0 -1 3上記最後の3 はドメインの数である.Monoclinicの3 つのドメインが双晶操作(b軸に平行な)3回軸で重なり,見かけ上Hexagonalになっている.BASFは(ドメインの数-1)だけ指定するので0.3 0.3と2 番目と3 番目のドメインの比率の初期値を入れて精密化する.もし,反射データがHexagonalとして指数付けされている場合は,読み込む反射データの指数変換を行うために,HKLF 4 1 1 0 0 0 0 1 0 -1 0とinsファイルの最後のところを書き換えて行う.4.6 Sohncke群に属する空間群で反転のドメインがあるラセミ結晶の場合:TWIN -1 0 0 0 -1 0 0 0 -1単にTWINと記述した場合は,この行列が入ることと同等.4.7 (Pseudo-)Merohedral双晶であり,かつラセミ結晶の場合TWIN 0 1 0 1 0 0 0 0 -1 -4最後の-4 はドメインの数(ここでは2)の2 倍を負の値にしたもの(ラセミのドメインの指示).BASFは3つ分指定するので0.25 0.25 0.25と初期値を入れて精密化する.BASFの値が仮に0.4 0.001 0.002と精密化されたときは反転した2つのドメインの寄与は無視できるので,TWINコマンドの-4 は削除し,BASFは1 つの値を残して小さいものを削除し精密化する.5.やや難しい系前述の4 または3 節の手続きを行いTwin law を当てはめてみても改善されないときや,試すべき空間群が多くあるときにもくじけずに以下のことを試してみる.・初期単位格子を決める際に用いる反射の数または閾値を変えてみて別の可能性を探す.・Orthorhombic以上のときに主軸の取り方を変えて(3通り)1つ対称性を下げたラウエ群の空間群で試してみる.・結晶軸の取り方が標準設定であることを確認し,Twinlawを当てはめてみる.または軸変換行列とTwin lawをかけ算したものをTwin law として試す.例えば:P21/n ―[Q]→ P21/cc,b,-a-cへの変換なので,[ Q]=[0 0 1 0 1 0 -1 0 -1]Twin law[0 0 1 0 -1 0 1 0 0]のとき,この行列に[Q]を左から掛けると[1 0 0 0 -1 0 -1 0 -1]となる.それをP21/n のデータに当てはめてみる.・見かけの空間群も決まらないときは,Triclinicとして格子を立てて積分を行い,初期構造が得られるか試してみる.・得られた初期構造の仮の単位格子内の分子の空間的関係から対称性を上げた格子(空間群)を探してみる.実際には,ソフトウェアで三次元的に分子を表示し,ぐりぐりと廻して,分子間に鏡面や回転の関係があるかどうかを探す.筆者はYadokari-XG13)を用いて見つけている.また低い対称性のままcheckCIFやPLATONを掛けてみると高い対称性を提案してくれることがある.・ブラベ格子を変更してみる.例えば,CならPへ変換してみる.C-Monoclinicで格子を立て積分を行ったものの,空間群C2 でも初期構造が得らないときなどは,Triclinicで格子を立て直して(または格子変換を行い)初期構造を得る.・得られた初期構造がDisorder していてR値が下がらないときもあるが,これは温度因子を見て判断可能であり,適宜disorder(構造の乱れ)処置をする.・X線回折装置付属のソフトウェアにより,Twin law を予測する(Cell_Now:APEX3,XPlain:CrystalStructure4など).また,本稿ではあまり触れなかったNon-merohedral双晶は,Sheldrick のTWINABS(2012/1)のGUIを搭載したAPEX3でHKLファイルを作り解析可能である.・同様にPLATON,WinGXを用いROTAX,TwinRotMatなどのソフトウェアにより,14)可能なTwin law を予測し,変換行列を当てはめてみる.SHELXLから出力したfcfファイルをこれらソフトウェアに読み込ませると可能な双晶操作を計算してくれるはずである.6.おわりに本稿を参考に「諦めていたデータ」を再度解析してみるきっかけとなればと考える.筆者の経験から,Twin lawを予測するソフトウェアを用いなくとも行列を見つけることができると考えられる.「諦めない,くじけない」ことが肝心である.(Pseudo-)Merohedral双晶の詳しい