ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No5

ページ
13/64

このページは 日本結晶学会誌Vol57No5 の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

日本結晶学会誌Vol57No5

日本結晶学会誌 第57巻 第5号(2015) 271SHELXLを使って双晶を解析しよう! はじめてのMerohedral Twin図3にMerohedral双晶,11)図4にPseudomerohedral双晶12)の例をそれぞれ示す.実際には,真の空間群を決めてそれを当てはめる行列を見つけるところが一番難しく,ある程度の結晶学の知識がないと困難である.10)しかし,まずは入門編として以下の3.1から3.3の手順を参考にされたい.3.1 Merohedral twin の見かけの空間群から真の空間群を決めるICT Vol. C. Table 1.3.4.1および1.3.4.2(文献7)の付録6も参照)と同等の表1,表2 より,晶系に基づいて双晶操作を決めるか,表2 の「見かけの空間群」から,「可能な真の空間群」を決める.複数の候補がある場合は,単位格子中の分子の数や対称性から適するほうをまずは選び,初期構造を求める.その際,開始時の格子セッティングが,標準設定となっていることが望ましい.または,現在の見かけのラウエ群よりも対称性を(1 つ)下げたラウエ群の同じ消滅則をもつ空間群を選ぶ.◆例2, 手順-1:-3m1のラウエ群で空間群がP3121(#152)であるとして初期insファイルを作成したとき,点群3 に属する空間群に下げ,表2の見かけの空間群P3121に対応する「可能な真の空間群」として,P3121 と同じ消滅則のP31 (#144)を「真の空間群」であると仮定して選ぶ(点群3,-3には同じ消滅則をもつほかの空間群が存在しない).複数の真の空間群の可能性があり,一義的に決められないときは,それぞれの空間群について試してみる.この際,P3121では初期構造は求まらずP31である程度の構造が見えてくる(図5).3.2 初期構造を求めた後,可能なTwin operation を決めるICT Vol. C. Table 1.3.4.1と同等の表1を参照しTwinoperation(双晶操作)を決める.表1 の点群について「反転双晶」以外の可能性のあるものに* 印を付けた.◆手順-2:表1中の-3mの点群3を横に見ると,可能な双晶操作が3 つ(-1,m,2)示してある.これらはそれぞれinversion(反転),mirror(鏡面),2-fold(回転)を意味している.3.3 INS ファイルに書き込む正しいTwin lawを決める双晶操作に対応する行列はICT Vol. A. Table 11.2.2.1と同等の表3,Table 11.2.2.2と同等の表4を参照しTwinlawを決める.◆手順-3:表4 より,手順-2で選んだm,2に関連する図3 有機金属分子のMerohedral 双晶の例:Twin law[0 1 0 1 0 0 0 0 -1]を当てはめる前後のR値と温度因子の変化,精密化後BASFは0.24(後述4.1の実例に相当).(An example of Merohedral twin:Changes of R-factor and thermal ellipsoid plots beforeand after Twin law[0 1 0 1 0 0 0 0 -1]application, thefinal BASF parameter was 0.24. Also see, 4.1.)図4 軽原子だけからなる有機分子のPseudomerohedral双晶の例:Twin law[-1 0 0 0 -1 0 0 0 1]を当てはめる前後のR値と温度因子の変化,精密化後BASFは0.50(後述4.4の実例に相当).(An example ofPseudomerohedral twin:Changes of R-factor andthermal ellipsoid plots before and after Twin law[-1 00 0 -1 0 0 0 1]application, the final BASF parameterwas 0.50. Also see, 4.4.)