ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No3

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概要

日本結晶学会誌Vol57No3

クリスタリット要であり,水蒸気吸脱着測定は欠かすことができない.日本結晶学会誌第57巻第3号(2015)(東京工業大学藤井孝太郎)等方相Isotropic Phase物質を構成する分子が周期的な配列をせずに,配向がランダムになっている相のこと.液体やガラス(アモルファス)がこれに帰属される.物質にX線を露光した際に,結晶相や液晶相は散乱に加えて相の周期構造を反映した回折現象が観察されるが,等方相は周期構造をもたないため回折現象は起こらず,散乱のみが観察される.(東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻星野学)PCMTPhotoinduced Crystal-Melt Transition光照射によって起こる相転移現象のうち,結晶相から融解相への転移現象を指す.通常,物質を融解させるためには加熱あるいは加圧が必要だが,PCMTは光照射のみで物質を融解できるため,物質の簡便な成形・加工手段として期待されている.また,光はレンズなどで集光可能であるため,加熱・加圧では困難であった融解による物質の微細加工を容易に実現できる.(東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻星野学)π???π相互作用π???πInteractionπ電子をもつ分子どうしに働く相互作用のこと.理論1計算による研究)から,相互作用の引力は分散力が主に寄与し,方向は分散力と静電力が主に寄与していることがわかっている.ベンゼン2分子のπ…π相互作用の場合は,2分子が完全に重なる配置よりも,2分子がずれた並行配置,あるいは2分子の面が直交したT字型の配置がエネルギー的な安定配置として知られる.本誌においてπ…π相互作用も含めた種々の相互作用の理論研究を紹2介した記事)があるので,参考されたい.1)M. O. Sinnokrot, E. F. Valeev and C. D. Sherrill: J. Am. Chem. Soc.124, 10887(2002).2)都築誠二,本田一匡:日本結晶学会誌, 46, 165(2004).(東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻星野学)ダブルジャイロイドDouble Gyroidジャイロイド極小界面は,1970年にアラン・シェーンによって発見された三次元空間的に広がる周期極小曲面である.この界面によって二分された空間を連結していくと,2つの入り組んだ3分岐ジャングルジムチャンネル構造を得ることができる(ダブルジャイロイド構造).非相溶の高分子を連結したブロック高分子や界面活性剤と溶媒(水など)との混合系からなるリオトロピック液晶などにおいて,ダブルジャイロイド構造を観察することができる.数学的観点から注目されてきた構造であるが,その三次元連続性からなる特有の構造ゆえに,近年,機能性材料研究において脚光を集め始めている.特に,ある種の液晶分子(双連続キュービック液晶)が自己組織的に形成するダブルジャイロイドチャンネル構造は,三次元連続性とオングストロームレベルでのチャンネル径の均一性を兼ね備えているため,物質輸送材料やサイズ選択分離材料への展開が期待されている.(東京農工大学大学院工学研究院一川尚広)TORTarget of RapamycinTORは出芽酵母で同定されたセリンスレオニンキナーゼで,細胞の栄養状態のセンサーとして機能する.化合物ラパマイシンにより阻害されることからこの名前が付いた.富栄養条件下,TORは活性化しており,下流因子のリン酸化を通して細胞増殖を促進するのに対し,飢餓条件下では活性が阻害され,細胞周期はG1期に固定される.オートファジーは飢餓時に強く誘導されるが,ラパマイシン処理によりTORの活性を阻害するだけでも飢餓と同様に強く誘導されることから,TORは富栄養条件下でオートファジーを負に制御する主要な因子と考えられる.哺乳類のTORはmTOR(mammalian TORまたはmechanistic TOR)と呼ばれる.((公財)微生物化学研究会微生物化学研究所藤岡優子)BARドメインBin/Amphiphysin/Rvs DomainBARドメインはAmphiphysinなど細胞内の膜動態にかかわるタンパク質に見られるドメインで,長く伸びたヘリックスバンドル様構造をもち,それがホモ二量体を形成することでバナナ様の構造を取る.バナナ様構造の凹面を用いることで,膜の曲率を認識する曲率センサーとして機能したり,ほかのドメインと協調して働くことで膜に曲率を誘導したりするなど,膜動態において重要な役割を担う.((公財)微生物化学研究会微生物化学研究所藤岡優子)HORMAドメインHop1p, Rev7p and MAD2 DomainHORMAドメインはHop1p,Rev7p,MAD2という3種類のタンパク質に共通して見られるドメインであり,ほかのタンパク質の認識にかかわる.MAD2のHORMAドメインについて詳細な構造研究がされており,天然状態で開いた構造(Open MAD2,O-MAD2)と閉じた構造(Closed MAD2,C-MAD2)という互いにトポロジーが異205