ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No3

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概要

日本結晶学会誌Vol57No3

篠田晃理することが容易となる.結晶にリガンドをソーキングする実験では,これまで結晶をバッファーから取り出す作業が手作業であったためソーキング時間を正確に管理することが不可能であった.手作業時には数十秒から数分の誤差がつきものであったが,結晶を固定することで秒単位の厳密なソーキング時間の管理が可能となる.また,ソーキング時間の与える影響を時分解で調べることも可能である.これは例えばソーキング時間を10秒,20秒,30秒……数分と段階的に振り,各段階でのリガンドの結晶への浸透の度合いと結晶状態を観測する実験である.これにより,これまで実験者の感覚のみに頼ってきたソーキング時間の決定に対し,実験的な情報を基にした論理的な検討を行えるようになる.ソーキングには物によって2段階以上のソーキングを必要とする場合がある.5)一段階のソーキングのときにも手作業では時間の管理が難しく,さらに結晶を拾い直す度に結晶に損傷を与える危険性があった.しかし,結晶が固定されることで多段階のソーキングでも,すべてのソーキング時間を厳密に管理することが可能となるのみに留まらず,結晶を拾い直す行程がなくなるため,結晶に損傷を与える可能性が大幅に軽減される.謝辞本研究は北海道大学先端生命科学研究院田中勲特任教授,姚閔教授,田中良和准教授,そして研究室のメンバーにさまざまな形で支えられた.この場を借りてお礼申し上げたい.文献1)T. Sakai, T. Matsunaga, Y. Yamamoto, C. Ito, R. Yoshida, S. Suzuki,N. Sasaki, M. Shibayama and U. Chung: Macromolecules 41, 5379(2008).2)D. P. Nair, et al.: Chem. Mater. 26, 724(2014).3)H. W. Wyckoff, et al.: J. Mol. Biol. 27, 563(1967).4)S. Baba, et al.: J. Biol. Cryst. 69, 1839(2013).5)J. Yamane, N. Ohyabu, M. Yao, H. Takemoto and I. Tanaka: J. Appl.Cryst. 43, 1329(2010).プロフィール篠田晃Akira SHINODA北海道大学大学院先端生命科学研究院Faculty of Advanced Life Science, HokkaidoUniversity〒060-0810札幌市北区北十条西八丁目Kita-ku, Kita 10 Nishi 8, Sapporo, Hokkaido 060-0810,Japane-mail: shinoda@castor.sci.hokudai.ac.jp最終学歴:北海道大学大学院生命科学院博士課程専門分野:構造生物学,情報工学現在の研究テーマ:構造生物学のメソッド開発,細胞培養のメソッド開発趣味:スノーボード,テニス,釣り,フルート,バイオリン,イラスト制作202日本結晶学会誌第57巻第3号(2015)