ブックタイトル日本結晶学会誌Vol57No3

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概要

日本結晶学会誌Vol57No3

大場茂表3同じサイトを異なるイオンが占めている例2.10)(Example 2 of sharing positions by the ions.)resファイルの内容EADP Sr1 Eu11EXYZ Sr1 Eu12EADP Si1 Al13EXYZ Si1 Al14SUMP 2.0 0.00001 4.0 3 1.0 45WGHT 0.012200 0.044300FVAR0.309740.948660.46999 0.12002SR1 5 0.666667 0.333333 0.750000 20.16667……EU1 6 0.666667 0.333333 0.750000 -20.16667……6SI14 0.666667 0.333333 0.427084 -30.33333……7AL1 3 0.666667 0.333333 0.427084 30.33333……N12 0.666667 0.333333 0.250000 10.16667……N22 0.309954 0.309954 0.500000 10.50000……PART 18B11 1.000000 0.000000 0.500000 -40.16667……9PART 2SI2 4 1.000000 0.000000 0.423109 40.16667……N3 2 1.000000 0.000000 0.250000 40.08333……PART 0(注)1から4で,同じ位置を共有して乱れている(Sr1とEu1)そして(Si1とAl1)の座標と温度因子をそれぞれ同じに拘束する.5自由変数の2,3,4番目をp2,p3,p4と表すと,2.0=4.0×p 3+1.0×p4を満たすように抑制する.これで,結晶の電荷を中性に保つ.6Sr1とEu1の占有因子の和を1/6に拘束する.7Si1とAl1の占有因子の和を1/3に拘束する.8(1,0,z)軸上に混在しているB1とSi2+N3の乱れをPARTコマンドで分けている.9B1とSi2の占有因子の和を1/6に拘束する.[IUCrからの許可を受けて引用]5.2乱れた構造の例2(空間群P6 _ 2c)_六方晶系,空間群P6 2c(No. 190)で構造が乱れている窒化物の例を次に紹介する.10)表3にそのresファイルを示した.構造中の原子座標データは数が少なく,これですべてである.Sr1とEu1は特殊位置の同じサイトを占め,それらの占有因子の合計は2/12=0.16667である.Si1とAl1は特殊位置の同じサイトを共有し,占有因子の合計は4/12=0.33333である.また,(1,0,z)軸上では,B1かあるいはSi2とN3かという置換型の乱れがあり,それをPARTコマンドで分けて指定している.さて,このように複雑に乱れている構造であっても,電荷が中性であるための条件,つまり式(2)が成り立つはずである.つまり,非対称単位中のすべての原子について,占有因子を考慮しながら電荷の総和を単純に計算すればよい.2,3,4番目の自由変数をそれぞれp2,p3,p4とすると,(Sr1 2+)p2/6(Eu1 2+)(1- p2)/6(Si1 4+)(1- p3)/3(Al1 3+)p3/3(N13-)1/6(N23-)1/2(B13+)(1-p4)/6(Si24+)p4/6(N33-)p4/12である.このうち,(+)の電荷を合計すると,(2/6)p2+2(1-p 2)/6+4(1-p 3)/3+(3/3)p3+3(1-p 4)/6+(4/6)p 4=(1-2p 3+p 4)/6+2であり,(-)の電荷の合計は3/6+3/2+(3/12)p 4=p 4/4+2である.よって,電荷が中性であるための条件は,(1-2p 3+p4)/6=p 4/4となる.これを整理すると次式となる.4 p 3+p4=2(7)文献1)G. M. Sheldrick: Acta Cryst. A71, 3(2015).2)Cambridge Structural Database(CSD, Version 5.35, 2013 Nov); C.R. Groom and F. H. Allen: Angew. Chem. Int. Ed. 53, 662(2014).3)http://shelx.uni-ac.gwdg.de/SHELX/4)大場茂,植草秀裕:「X線結晶構造解析―強度測定からCIF投稿まで―」,化学同人(2014).5)大場茂:日本結晶学会誌57, 87(2015).6)A. Thorn, B. Dittrich and G. M. Sheldrick: Acta Cryst. A68, 448(2012).7)S. Ohba, H. Okazaki, Y. Ueda, K. Hanaya, M. Shoji and T. Sugai:Acta Cryst. E69, o1811(2013).8)A. L. Spek: Acta Cryst. C71, 9(2015).9)K. Mereiter: Acta Cryst. C69, 1085(2013).10)S. Funahashi, Y. Michiue, T. Takeda, R. -J. Xie and N. Hirosaki:Acta Cryst. C70, 452(2014).プロフィール大場茂Shigeru OHBA慶應義塾大学自然科学研究教育センターResearch and Education Center for Natural Sciences,Keio University〒223-8521横浜市港北区日吉4-1-1Hiyoshi 4-1-1, Kohoku-ku, Yokohama 223-8521,Japane-mail: ohba@a3.keio.jp最終学歴:理学博士(東京大学,1981)専門分野:結晶化学現在の研究テーマ:キラルな化合物の構造と物性表3では,この式(7)の条件を,SUMPコマンドで指定している.154日本結晶学会誌第57巻第3号(2015)