ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No3

ページ
69/94

このページは 日本結晶学会誌Vol56No3 の電子ブックに掲載されている69ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

日本結晶学会誌Vol56No3

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

日本結晶学会誌Vol56No3

日本結晶学会誌56,209-210(2014)未来へ羽ばたけ!―若手研究者紹介―結晶学に出会って熊本大学自然科学研究科平床竜矢熊本大学大学院博士後期課程2年の平床と申します.温度変化に対する遷移金属,主にチタンの酸化物の構造変化をXAFSやXRDを用いて研究し,博士号を取得するために日々研究に勤しんでいます.羽ばたく以前に孵化段階の私ですが,どのようにして現在まで卵を突っついてきたか振り返っていきたいと思います.結晶に初めて関心がわいたのは,学部時代に野外巡検で訪れた宮崎県延岡市大崩山で松茸水晶を発見したときでした.大崩山は九州でも秘境といえる場所で,ペグマタイトの路頭が観察できる素晴らしいところです.宝石として有名なLiの入った電気石のエルバイトの産地です.山道に散らばっている石ころの中に落ちていた水晶やイルメナイト結晶の様子はあまりにも不自然で,もしかしたら,誰かが採ったものを落としたのかもしれません.そうだとしても,やはり自分で見つけた鉱物に対する思い入れは格別であります.持ち帰ってからきれいに拭き,水晶の上にさらに新たな水晶が結晶した形をずっと見つめていました.結果, 2つめの水晶は1つの水晶では物足りないと考え,一人前の男になるために結晶化したと変な納得をしていました.今でも,机の上に置いてあり,眺めるたびに立派なものだと感心しております.その後,私が結晶学を学び始めたのは現在所属する吉朝朗先生の研究室に入ってからです.学部の授業でも,結晶学の入門を扱った吉朝先生の授業があり,パソコン上で結晶構造を描いたり,木製のブロック体を回しながら対称要素を探したりしましたが,それほど興味を引くものではありませんでした.どうして,今の研究室に入ったかというと,授業中に話が先生の研究になり,熱く「わしは研究で世界と戦っとるんや,うちにきたら戦わせてやる!」と仰ったときに,吉朝先生の研究室に行けば面白い体験ができると考えたからでした.研究室に入ってからは,学会や放射光施設での実験または他研究所へのインターンシップでさまざまな経験をさせてもらっています.昨年度の結晶学会の年会は熊本大学で行われ,微力ではありますが学会運営に携わることができました.それまで2度ほど,結晶学会に参加してきましたが,自分の発表で頭がいっぱいで,受け入れる大学の人たちのご苦労日本結晶学会誌第56巻第3号(2014)を考えたことがありませんでした.何も問題が起こらず,滞りなく進むことがいかに大事かを知ることできました.参加した方々が熊本,熊本大学に良い印象をもち,また来ていただければ嬉しい限りです.熊本はカルデラで有名な阿蘇山や白川水源などの地下水に恵まれていますが,放射光施設はなく,実験は主につくばのフォトンファクトリー(PF)のBL9A, 9Cや10Aを使っています. 10Aの四軸X線回折装置は,作業行程が大学で使っているものとは違いブラックボックス化されていません.学んでいる結晶学と取扱い説明書を使って測定までこぎつけています.大学でマトリックスを決めてきた結晶のピークが決まらない場合は,その場で振動写真を撮り,回析斑点の位置からピークサーチを試みます.φ,χ,ωを振って,強度計を凝視し,針が大きく振れるのを待ちます.複数のピークを見つけることができると,それを基にほかのピークを次々探すことができ,測定に向かうことができます.また, X線の強度が強いので,結晶が良くないと,ピークが割れて見えるため,良質な結晶が試料として求められます.そのため,試料作り,測定を通して自分の力量を測られている気がします.時には,ほかの研究室の先生方の手を貸していただきながら実験を行っています.ほかの研究室の方には,実験のときだけではなくインターンシップ生として学ぶ機会も与えていただきました.岡山大学地球物質科学研究センターでは,高温高圧下でのジルコニアの熱伝導率を測定するため,丸一ヶ月セル作りに没頭しました.自分が参加した高圧グループは半数以上が209