ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No3

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日本結晶学会誌Vol56No3

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日本結晶学会誌Vol56No3

備前焼模様の微構造と形成過程図4図3の試料表面に生成した結晶相のTEM観察結果.(TEM images of the main crystalline phases formed in thesample surfaces shown in Fig.3.)図中C, HおよびC+Hは,それぞれコランダム,ヘマタイトおよびコランダムを覆ったヘマタイト粒子を示している.図4に,図3の試料表面のガラス相中の結晶相の透過型電子顕微鏡(TEM)観察結果を示す.結晶相はガラス中に埋まっているため, 47%のHF溶液に試料表面を浸してガラス相を除去した後,超音波によりCCl 4中に分散し,その一部をマイクログリッドに滴下して観察した.備前焼粘土のみを焼成した試料(a)では,やきものの骨格である針状のムライト(Al 6Si 2O 13)粒子が主な結晶相であった.このムライトにはFeが固溶していた.備前焼粘土と稲わらを焼成した後,急冷した試料(b)では,ムライトの生成はほとんどなく,主な結晶相は板状のコランダム(酸化アルミニウム,α-Al 2O 3)であった.(c)は10℃/minで冷却した試料のTEM像である.図中Cで示したコランダム粒子の周囲に,約0.3μmの小さな粒子が付着している.元素分析および電子線回折(ED)から,これらの粒子はヘマタイトであることがわかった.冷却速度がさらに遅い(d)では,コランダム粒子は約2μmに成長し,ヘマタイトの結晶成長も進行してコランダムを完全に覆い尽くしたコア・シェル粒子(図中C+H)を形成することが明らかとなった.図5に, 10℃/minで冷却した試料の詳細なTEM観察結果を示す.(a)は約1.0μmのコランダム粒子の端部に,約0.3μmのヘマタイトが析出した粒子のTEM像である.図中の電子線回折(ED)は,コランダムおよびヘマタイトの[0001]晶帯軸を示しており,その方位は完全に一致していることから,ヘマタイトはコランダム粒子にエピタキシャル成長していることがわかる.また,中央付近の両相の重なり部分にはモアレ縞が観察され,その間隔は4.4nmであり,平行モアレとして計算した値(4.3 nm)とよ日本結晶学会誌第56巻第3号(2014)図5備前焼粘土と稲わらを大気中にて1250℃まで昇温した後, 10℃/minで冷却した試料のTEM像.(TEMimages and ED patterns of the sample heated at1250℃and then cooled at a rate of 10℃/min.)(a)のEDパターンは,コランダムおよびヘマタイトc面を示している.(b)は,コランダムおよびヘマタイトの[1 _ 21 _ 0]像を示している.く一致していることからも,ヘマタイトはコランダム粒子にエピタキシャル成長していると言える.(b)は[1 _ 21 _ 0]像を示している.ヘマタイトがコランダム粒子の端部からc面方向に成長しているのがわかる.181