ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No3

ページ
37/94

このページは 日本結晶学会誌Vol56No3 の電子ブックに掲載されている37ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

日本結晶学会誌Vol56No3

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

日本結晶学会誌Vol56No3

結晶学における可視化ソフトウェアの開発と応用例図8 VESTAで可視化したU 3Ru 4Al 12の磁気構造. 33)(Magnetic structure of U 3Ru 4Al 12 drawn with VESTA.)図7空間群Fd3 _ mの一般等価位置図.(General positiondiagram of space group Fd3 _ m.)造を完全サポートする予定である.4.ソフトウェア開発の技術動向したものである.現行の第5版では,立方晶系のgeneralposition diagramだけ,主にスペースの都合から立体視用の小さな図が使われているが,見辛いことと,鏡像位置を示すマークが省略されていることから,第6版では描き直すこととなった.印刷用には,立体感をなくした線描の図も出力できるが, PC上で図を回転させながら眺めれば,立体的配置が理解しやすいであろう.対称要素の位置を示す空間群図も,本来であれば立体的に3D表示することが望ましく, Mercury 30)ではすでに実装されている. VESTAにも望まれる機能であろう.3.3磁気空間群と磁気構造の可視化結晶構造データの標準ファイル形式であるCrystallographicInformation File(CIF)には,変調構造の記述に対応したModulated structures CIF(msCIF)や,高分子用のMacromolecularCIF(mmCIF)などの拡張仕様があり,同様に,磁気構造向けのMagnetic CIF(mCIF)が現在検討されている.すでにBilbao Crystallographic Server 31)ではmCIF形式による磁気構造データベースが試験的に公開されており, VESTAにより可視化したプレビュー画像とともに,VESTA形式のファイルも提供されている. VESTAでは任意の原子に任意の矢印を追加でき,あらゆる磁気構造を描くことができる.単結晶・粉末構造解析ソフトウェアJana2006 32)でも,磁気構造の可視化にはVESTAが利用されている.しかし, VESTAは磁気空間群に対応していないため,ユーザーが磁気モーメントを編集するのは非常に煩雑であった.外部プログラムでデータを自動生成する場合も,描画範囲を単一の単位胞以外に設定することが困難な仕様となっていた.そこで現在,この問題点の解消に取り組んでいる. VESTA ver. 3.1.8以降では,すでにmCIFファイルを直接読み込み,磁気空間群の対称性に基づいた磁気構造の可視化が可能である(図8).磁気モーメントの編集やファイルへの保存はまだできないが,近い将来には,全1651磁気空間群のデータベースを組込み,磁気構日本結晶学会誌第56巻第3号(2014)世界的な技術トレンドとしては,計算処理の並列化やGPGPU,コードの再利用を前提としたライブラリー化などが挙げられる.並列化は,大型計算機では昔から重要な技術であったが,近年ではCPUのマルチコア化が進んだため,汎用ソフトウェアであってもMEMのように計算量の多い処理には不可欠である.並列プログラミングのための基盤技術の1つであるOpenMPを利用すると,逐次処理を行うソースコードに,わずかな追加命令を記述するだけで手軽に並列処理が実現できる.しかし,実際には,逐次処理を前提とした従来プログラムにOpenMP命令を追加しても,高速化はほとんど望めず,かえって処理が遅くなることも多い.並列計算を効率的に行うためには,コンパイラーによるコードの最適化を妨げないことや,近接したメモリー領域に複数のCPUコアから同時アクセスしないなど,設計段階での配慮がきわめて重要である. GPGPUはグラフィックスプロセッサ(GPU)の処理能力を数値計算に流用するもので,処理内容と設計次第では汎用マルチコアCPUをはるかに超える処理速度が期待できる.まだ,コードの移植性や再利用性とトレードオフの関係にあるが,移植性を高めるフレームワークの整備が進んでいる.結晶学ソフトウェアでは,行列やベクトルの演算,対称操作や結晶構造因子の計算など,必ず必要になる共通処理が存在する.それらの共通処理を,異なる開発者が繰り返し開発する無駄を省くため, Computational CrystallographyToolbox(cctbx)やObjCryst++など,オープンソースのライブラリー整備が進められている.迅速な開発や持続的発展のためには,こうした汎用ライブラリーを,細かい粒度で,依存関係を最小限に抑えて整備していくことが,今後ますます重要になるであろう. VESTAでは,設計思想の違いからいずれのライブラリーも使用していないが,コア機能と, OSやユーザーインターフェースに関係する機能を明確に切り分け,コア機能をライブラリーとして再利用できる設計を徹底している.177