ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

クリスタリットな生命活動に必要不可欠な分子である.これらヌクレオチドは,細胞内に一定量蓄えられており,その集団をヌクレオチドプールと呼ぶ.(熊本大学大学院生命科学研究部中村照也)家族性アミロイドポリニューロパシーFamilial Amyloid Polyneuropathyアミロイド線維が臓器に沈着することによって発症する疾患の1つで,感覚障害,運動障害および自律神経障害を呈する遺伝性希少難病.変異体トランスサイレチンが原因タンパク質で,これまでに100種類以上の原因となる変異が見つかっている.特にV30Mは家族性アミロイドポリニューロパシー患者から最も多く見つかっている変異である. V30M変異体トランスサイレチンなどのアミロイド性タンパク質がミスフォールドし,凝集することによって不溶性のアミロイド線維が形成される.タファミディス(ファイザー社,ビンダケルR)はV30M変異型トランスサイレチンを有する患者の末梢神経障害の進行抑制に有効な薬剤であり,ホモ4量体のトランスサイレチンに結合することで,トランスサイレチンのミスフォールディングおよびアミロイド線維形成を抑える.(富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)横山武司)ウェルナー症候群Werner Syndrome若い年齢で全身の老化が進行する早老症の病気.原因はWRNヘリカーゼの遺伝的変異(常染色体劣性遺伝の疾患).出生後すぐに早老症の症状が現れるハッチンソン・ギルフォード症候群(プロジェリア)と異なり, 10代なかばから老化が急速に進むため,成人性プロジェリアともよばれる.平均寿命は40~50歳.治療法は見付かっていない.患者数は世界で数千人と推定されているが,その7割を日本人患者が占めていて,わが国特有の遺伝病と言われている.実際,日本人の数百人に1人がウェルナー症の保因者,すなわち発症しなくてもWRN遺伝子に変異を有すると推定されている.(奈良先端科学技術大学院大学北野健)ブルーム症候群Bloom Syndrome10代にしてさまざまな悪性腫瘍を頻発する高発ガン性の病気.原因はBLMヘリカーゼの遺伝的変異(常染色体劣性遺伝の疾患).平均寿命は20~30歳.治療法はまだない.白血病を含むほぼ全種類のガンの早期発生がみとめられるが,このような病気はブルーム症候群以外に見付かっていない.すなわち,ダブルホリデイジャンクション解きほぐしに代表されるBLMのゲノム維持作用は,ヒトに備わった最も基本的なガン抑制機構の1つと考えられる.(奈良先端科学技術大学院大学北野健)脱カテナン化Decatenationカテナン(2つの環状分子が,共有結合を介さず鎖のように連結した状態)を解消して分離させる反応.真核生物のゲノムDNAは線状であるが,非常に長いため,複製や修復のさい局所的にカテナン状の絡まり(ヘミカテナン)が多数生じる.通常, DNAの脱カテナン化はトポイソメラーゼによって触媒される.ダブルホリデイジャンクションは, 2つのホリデイ構造とヘミカテナンが組み合わさった複雑なかたちをしているため,解きほぐしにはBLMによる分岐点移動と,トポイソメラーゼによる脱カテナン化がうまく連携して行われる必要がある.(奈良先端科学技術大学院大学北野健)日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)143