ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

日本結晶学会誌56,77(2014)特集:物性研究における結晶学-物性のダイナミズムと結晶構造-物性研究における結晶学-物性のダイナミズムと結晶構造-特集号担当:寺内正己,後藤義人,森茂生,木村宏之,齋藤晃Masami TERAUCHI, Yoshito GOTOH, Shigeo MORI, Hiroyuki KIMURA and KohSAITOH: Crystallography in Materials Science; Crystal Structure as the Stage of Material’sPersonality世界結晶年に当たり,結晶学会誌編集委員会において毎号ミニ特集を組むことが決まりました.第1号では,新時代の結晶学と題しX線自由電子レーザーSACLAの特集でした.第2号からは,物理,鉱物,生物,化学における各分野の若手やベテランを交えたミニ特集が始まります.今号(2号)では,物理系のミニ特集となります.物性とは物質の外場に対する応答ですので,物質での何らかの状態変化を伴います.すなわち,物質を形作る原子殻と電子配置の自由度が重要となります.よって,物性研究者にとっての結晶構造モデルとは,誘電性や磁性などの多彩な物理的特性を出現させるための,電荷・スピンをもった電子が活躍する舞台と考えることができます.結晶構造解析により得られた構造モデルなどを見ると,一見,静的な印象を受けます.しかし,その原子位置や電子分布などは時間および空間に関する平均値ですので,結晶の対称性(空間群)を崩さない範囲での自由度をも表していると解釈することも可能です.こういう意味で,時間・空間平均ではなく,時間分解能や空間分解能を伴った結晶構造解析手法の発展というのは自然の流れと言えます.本ミニ特集は,多彩な物性研究が展開されている遷移金属酸化物の構造・物性研究に関して,若手・ベテラン,逆空間解析・実空間解析を織り交ぜた記事3編と,結晶構造解析そのものの進展にかかわる記事2編から構成されています.後半の2編は,これまでのX線構造解析ではわからなかったナノドメイン構造の存在を示唆する空間分解能を伴った構造解析と,構造乱れ(原子の移動)が物質機能と密接にかかわっている二次電池材料に関するものです.これまでの結晶構造解析は,平均構造に対する230個の空間群と原子位置という道具で行われてきましたが,二次電池材料で重要な,基本構造を保ったままのイオンの移動TopotacticReactionの解明はこれからの重要なテーマだと言えます.新しい物質が合成されると,最初にX線回折による結晶構造解析が行われるように,物性研究と結晶構造解析は切っても切れない関係にあります.このミニ特集により,物性発現のための舞台ともいうべき原子配置を明らかにする結晶学の重要性が再認識できればと思います.日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)77