ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

日本結晶学会誌56,139-140(2014)未来へ羽ばたけ!―若手研究者紹介―中性子回折5年目川崎卓郎日本原子力研究開発機構J-PARCセンターの川崎と申します.今回は日本結晶学会誌での若手研究者紹介ページを書かせていただく機会をいただき,ありがとうございます.第一号ということで一体何を書けば良いのかよくわからないところではありますが,特に具体的な指示もなかったので何を書いても良いのだな,と解釈して書かせていただくことにします.現在の仕事としては,中性子実験施設であるJ-PARC物質・生命科学実験施設に設置された中性子回折装置の維持・管理・高度化・利用者支援を行いつつ,中性子回折を使った物質・材料研究を行っています.具体的な研究の内容にはここでは特に触れませんが, J-PARCの中性子を使って結晶学にかかわるどんなことが,どれくらいできて,それをやるとどんな良いことがあるのか,というところに興味をもって日々の仕事や研究に取り組んでいます.装置のお世話や利用者の実験のお手伝いはなかなか大変な部分もありますが,どうすればこの装置がもっと良くなるのか,別の新しい使い方はないのか,課題ごとに異なる実験をどうすれば成功させることができるのかを考えるのは楽しく,やりがいも感じています.そんな私ではありますが,結晶学との出会いは,大学での卒業研究のための研究室への配属時でした.大学4年から大学院の博士後期課程修了まで,筑波大学の大嶋建一先生の研究室で過ごさせていただきましたが,配属先研究室選びの際に,実験系で4年生の最後まで部活動(空手)をさせてもらえる研究室,という基準で探しているとなかなか見つかりませんでした.そこで,もしや,と思い大嶋先生にお願いしてみたところ「いいんじゃない」とのお言葉をいただき,ここだ,と思って決めました.何をしている研究室なのかよく理解せずに入ってはみましたが,自分の手で結晶を作って,回折実験を行い,構造を考えるという流れが気に入り,結局,博士後期課程まで進学してしまいました.学生時代は層状硫化物の研究を行っていましたが,初めて自分で作った単結晶の綺麗なX線回折像を見たとき,何やらとても嬉しかったのを覚えています.また,研究室にはいくつかのX線回折装置があり,そのうちの何台かは手作り感満載の非常に歴史を感じさせる装置でした.やりたいことが好きなようにできる良い装置ではあったのですが,たびたび機嫌が悪くなること日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)平成22年3月筑波大学数理物質科学研究科博士後期課程修了平成22年4月日本原子力研究開発機構J-PARCセンター博士研究員平成25年4月より現職所属:日本原子力研究開発機構J-PARCセンター(研究員)E-mail: takuro.kawasaki@j-parc.jp専門:中性子回折趣味:ランニング,サイクリング,ツーリングがあり,その度にあれこれ考えて実験していました.思えばその経験が現在の仕事に活きているような気がします(もちろん, J-PARCの装置はもっと安定していますが).さて,現在は中性子回折を専門に行っていますが,当時は自分の研究で中性子を使うことはまったくありませんでした.そのような中で,初めての中性子との出会いは同じ研究室の高橋美和子先生のお手伝いで行ったJRR-3での中性子散乱実験でした.予備知識も何もなく東海村までやってきて実験を始め,巨大な装置と巨大な試料に衝撃を受けつつもX線とは異なる情報が得られる中性子に興味をもったことがきっかけとなり,大学院修了後に原子力機構のJ-PARCセンターに所属することとなりました.最初の3年間は博士研究員として,ちょうど始まろうとしていた単結晶パルス中性子回折装置SENJU(BL18)の建設と,この装置を使った糖水和物の結晶構造解析や希土類化合物の磁気構造解析に携わりました.中性子というと,数mm以上の大きな試料が必要,というイメージがありましたが, 1 mm角程度の結晶でも現実的な測定時間で解析139