ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

北野健図2ヒトWRNとBLMのドメイン立体構造.(3D structures of human WRN and BLM domains.)(A)WRN RQCドメイン-二本鎖DNA複合体(PDB ID:3AAF). 1)(B)WRN HRDCドメイン. 2つの異なる結晶系(2E1E,2E1F)2)で構造を決定した.(C)BLM RQCドメイン.リン酸およびヒ酸イオン結合型(3WE2, 3WE3)3)の構造を決定した.イオンの位置はDNA結合サイトの1つを表している.(D)BLM HRDCドメイン.唯一, NMR法で構造を決定した(2RRD). 4)図2に,筆者らが構造決定した, WRN 1),2)とBLM 3),4)のドメイン立体構造(計4個)を示した.両タンパク質間で領域の相同性は10~20%と低いものの, RQCドメイン(A, C)とHRDCドメイン(B, D)は,それぞれ似たフォールディング構造をとっていた.ただし各ドメインの境界(N末端とC末端の長さ)にはWRNとBLMで違いがみられ,これが結晶化のさい,精製コンストラクトの検討に時間を費やした理由であった.現在はいずれのドメインも大腸菌を使って大量発現させて,高純度精製できるようになっている.RQCドメインは, DNA結合モジュールの1つとして有名なwinged-helix構造5)をとっていた.一方でHRDCドメインは, 6本のヘリックスが組み合わさった楕円体状の構造を形成していた.それぞれのドメインに対して合成DNAとの共結晶化を試みてきたが,複合体の結晶が得られたのはWRN RQCドメインであった(図2A).まず,このRecQファミリー初のDNA複合体構造について解説する.2.RQCドメインの構造と機能2.1 WRN RQCドメイン-DNA複合体の結晶解析共結晶化の実験では,ヘリカーゼの一般的な基質であるフォークDNAを使ってスクリーニングを始めたが,結晶が得られたのは意外にも,単純な二本鎖DNAを用いたときであった. DNAの長さを変化させつつ結晶化条件の精密化を行ったところ, 14塩基対の二本鎖DNAを用いたときに,高分解能(1.9 A)の反射を与える結晶を得ることができた. X線回折データの収集は,大型放射光施設スプリング8のビームラインBL41XU, 44XUで行った.構造解析の位相決定は,結晶に水銀試薬(ethyl mercuricphosphate)をソーキング法で浸透させて,多波長異常分散法(MAD)で行った.決定した複合体の結晶構造(図2A)1)では,まず驚いた134日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)