ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

中性子散乱による二次電池材料中の構造乱れの研究図2 LiMn 2O 4の結晶構造.(Crystal structure of LiMn 2O 4.)図4Li 3xLa 2/3?xMO 3の結晶構造.(Crystal structure ofLi 3xLa 2/3?xMO 3.)図3 LiFePO 4の結晶構造.(Crystal structure of LiFePO 4.)面に沿って二次元的に拡散することが知られている. 8)スピネル型構造をもつ物質として, LiMn 2O 4が挙げられる.原料となるMnの埋蔵量が豊富であり,比較的安価であることからLiCoO 2などとの代用が有望な材料である.しかし,層状岩塩型に比べて容量が少なく,また室温付近においてJahn-Tellr歪みを起こすなど問題が多々ある. 9)そのためMnの一部をLi, Al, Co, Fe, Mg, Niなどのほか金属で置換することで,容量や歪みの改善に対処する試みが多く行われてきた. 10),11)結晶構造はスピネル型であり,結晶中においてLiはLiO 4四面体構造, MnはMnO 6八面体構造をとっている(図2). Liは四面体の面の方向に空のサイトを経由してジグザグに拡散すると言われている. 12)オリビン型構造の代表物質としてLiFePO 4が挙げられる.容量は低いが,原料がFeと安価で,また軽いため携帯電話や大型蓄電装置の利用に有望な材料である.結晶中のPO 4四面体構造が非常に安定しているため充放電の際の熱特性に優れている. LiFePO 4の結晶構造を図3に示す.LiはLiO 6六配位八面体構造をとっており,隣り合った八面体を通じて一次元的に拡散する. 13)2.2固体電解質典型的な結晶性固体電解質材料として,ペロブスカイト型およびガーネット型構造が報告されている.ペロブスカイト型構造をもつLi 3xLa 2/3?xMO 3(M=Ti, Nb, Zr)は高いLiイオン伝導性と構造安定性をもつことから固日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)図5 Li 7La 3Zr 2O 12の結晶構造.(Crystal structure ofLi 7La 3Zr 2O 12.)体電解質として注目されている. 13)結晶構造を図4に示す.Li 3xLa 2/3?xTiO 3(x=0.11)のイオン伝導率は室温で10 ?4Scm ?1程度であり,結晶内を三次元的に拡散すると報告されている. 13)金属原子Mをイオン半径の大きいものに置換することで結晶サイズを拡張し,イオン伝導率を向上させる試みや,酸素原子とのイオン結合性の低い金属に置換することで活性化エネルギーを下げるなどの試みがなされている. 14)図5はLi 7La 3Zr 2O 12という組成をもった複雑な結晶構造をもつガーネット型の物質である.室温におけるイオン伝導率は10 ?7 Scm ?1程度と報告されており,非常に低い伝導率を示すがZrの一部をAlに置換することによりイオン伝導率が10 ?4 Scm ?1と格段に向上するという報告が多数なされている. 15)-17)2.3負極材料物質典型的な負極材料として,黒鉛,ハード・カーボン,合金負極などが報告されている.黒鉛は整然とした層状構造を有し,この結晶の層にさまざまな原子をドープできることが知られている.層間へのドープはインターカレートと呼ばれ,ドープにより形成される化合物をグラファイ105