ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

堀部陽一図3YMnO 3における分極処理前後のボルテックス分域構造.(Vortex domain structures before and afterpoling in YMnO 3.)(a)分極前試料におけるボルテックス分域構造.(b)室温において約75 kV/cmの外部電場にて分極処理された試料におけるボルテックス分域構造.図4(a)ボルテックス分域境界間の相対角度,(b)ボルテックス芯近傍の局所構造の模式図.((a)Relativeangles between vortex domain boundaries,(b)schematicfigure of local structure near vortex core.)暗視野像中では,幅約100 nm程度の3つの細い分域(矢印A)と, 3つの大きな分域(矢印B)からなる非対称なボルテックス分域構造が観察される.これら3つの細い分域は,各々の分域において一対のボルテックス芯と反ボルテックス芯が終端となっており,一方3つの大きな分域は,各々の分域に複数対のボルテックス芯と反ボルテックス芯が存在している.さらに像を詳細に見てみると,電場印加によりボルテックス芯-反ボルテックス芯間の距離が短くなっている傾向が観察される.この結果は,ボルテックス分域構造の消滅のため,ボルテックス芯と反ボルテックス芯の距離が減少していることを示唆している.すなわち抗電場よりやや大きい外部電場印加により,対称的なボルテックス分域が非対称なボルテックス分域に変化するものの,ボルテックス分域構造の消滅には不十分であることが明らかとなった.またこれらの結果は,抗電場以上の外部電場印加でも,単一強誘電分域の実現は困難であることを示唆している. 16),17)4.ボルテックス分域境界の局所構造と境界絶縁性ボルテックス分域構造における,分域境界間のなす角度について調べた.図4aは, YMnO 3におけるボルテックス分域境界間のなす角度θと,角度θで交わる分域境界対の数についてのグラフである.図を見ると,分域境界はおおよそ60°の角度で交わる傾向を示す.これらの結果を基に描いた,ボルテックス芯近傍の可能な局所構造の模式図を図4bに示す.模式図は,反時計回りのα+/β-/γ+/α-/β+/γ-分域配列を示しており,またボルテックス芯近傍で可能な限り簡単な局所構造をもつように,すなわち6つの分域境界が1点で交わるように描かれている.図中では,ボルテックス芯近傍の領域において,分域内部とは異なる特異な局所構造の出現可能性が示されている.また分域境界において,2種類の異なる局所構造の存在が示唆されている. 15),20)ボルテックス分域境界での2種類の異なる局所構造の存在について調べるため, HoMnO 3の分域境界近傍において側面方向からHAADF-STEM観察を行った.その結果,予想された局所構造とはやや異なるものの,実際にボルテックス分域境界において2種類の局所構造が見出された.その結果をそれぞれ図5aおよびbに示す.電子線の入射方向は[11 _ 0]方向にほぼ平行であり,像中の明るい点状コントラストおよびやや暗い点状コントラストは,それぞれHoイオンおよびMnイオンに対応している.両図ともに,左側に位置する分域において,マイナス方向の強誘電分極に対応するUp-Down-DownタイプのHoイオン変位が,右側に位置する分域において,プラス方向の分極に対応する94日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)