ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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日本結晶学会誌Vol56No2

佐賀山基,有馬孝尚2dσedΩ? ? ? ? mc22?ω? ? 2h ?? ?2sinmc ?2 2 232θS+ S sinθ+S sinθtanθ+ iP sinθS S ?SS2circ(2)S i(i=1, 2, 3)は図4aで定義されている(u 1, u 2, u 3)座標中におけるスピンのフーリエ変換である.θはX線の入射角度, P circはポアンカレ球における円偏光度を表すパラメータであり,本稿においてはP circ=1を右回り円偏光(RHC),左回り円偏光(LHC)をP circ=-1と定義する(この定義ではある瞬間の右円偏光はは右ねじ回転の軌跡を描く). P circを含む項はu 2方向とu 1方向のスピン変調の位相が異なるときにのみ生き残り,螺旋磁気構造の回転面がu 3-axisと直角に近いほど散乱強度は円偏光度P circに大きく依存する. Q=(-1 0 2)+k, T=8.5 Kにおいて磁気散乱強度の円二色性を観測した(図4b).強誘電に関して単一ドメインのときRHCとLHCで磁気散乱強度は大きく異なり,散乱強度の比(~1/7)は中性子散乱実験から得られたパラメータを式(2)に適用して得られる値と一致する.電気分極の反転に伴い大小関係が逆転することは,スピン偏極中性子散乱実験と同様にスピンカイラリティの反転を示している.構造物性研究に際しX線回折が中性子散乱に対して優位な点として1熱中性子吸収断面積が大きな元素(B, Eu,(222 21* *( 2 1 1 2))Dy, Gd,など)を含む物質でも測定可能, 2磁場下実験が可能, 3ナノサイズのX線を用いたスキャン形顕微法による磁区構造の観察が可能, 4スピンと軌道角運動量を分離して測定可能,などが挙げられる.目的に合わせて両手法を相補的に活用することが肝要であり,次章で述べるRMnO 3はその一例である.4.RMnO 3(R=Dy or Tb)4.1磁気強誘電性と磁場印加による電気分極回転Aサイトを三価希土類イオンが占有するぺロブスカイト型マンガン酸化物は,希土類イオンが小さくMn 3+イオンがヤーンテラー活性であるため,√2×√2×2の単位胞で斜方晶に歪んでいる(図5a).常磁性常誘電状態では空間群はPbnmである. R=Laの場合には磁気基底状態はA型反強磁性であるが,希土類イオンが小さくなり格子歪みが大きくなるとE型反強磁性となり,その中間領域(R=Dy, Tb)では非整合長周期磁気構造が安定化する. 24)どちらの場合も長周期磁気相で強誘電分極が発現し同様の磁場依存性が報告されているので, 25)先に報告されたTbMnO 3を例に具体的に述べる. T N=43 K, T C=27 Kで段階的にMnスピンが秩序化し,中間相(T N>T>T C)では共線的正弦波構造,低温相(T<T C)ではMnスピンがbc面内で回転し, b軸方向に波数q~0.27で進行する横滑り螺旋磁気構造をとる(図6b). 26) Tc以下においてc軸方向に自発電気分極が現われる.図2bに示された「最も簡単な例」そのものであり,スピンカレントモデルはTbMnO 3の横滑り螺旋磁気構造と強誘電性の関係をよく説明する. MnWO 4と同様,われわれが行ったスピン偏極中性子散乱実験によりその正当性が実証された. 27)その経緯はMnWO 4の場合とほぼ同じであり(実際にはTbMnO 3が先に測定されたが),すでに本誌上でも報告している16)ので割愛する.磁場をa軸方向に印加する際には約12 Tで, b軸方向に磁場を印加する場合には約4 Tで,自発電図4(a)円偏光X線回折実験の概念図.(b)MnWO 4の(-1 0 2)+kにおける円偏光X線磁気反射.((a)Schematic view of a circularly-polarized X-ray diffraction measurement.(b)Circular dichroismof(-1 0 2)+k X-ray magnetic reflection ofMnWO 4 at 8.5 K.)参考文献23)より引用.図5RMnO 3の(a)結晶構造と(b)磁場による電気分極の回転.((a)Crystal structure of RMnO 3,(b)Electricpolarization flop induced by a magnetic field alongthe a and b axis in RMnO 3.)88日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)