ブックタイトル日本結晶学会誌Vol56No2

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概要

日本結晶学会誌Vol56No2

小野田雅重3.2 Li xV 2(PO 4)3Li 3V 2(PO 4)3には単斜晶相と三方晶相が存在する.前者が通常の固相反応法で得られるのに対して,ナトリウム超イオン伝導体Na 3Zr 2PSi 2O 12と類似の構造をもつ後者は,同型Na 3V 2(PO 4)3とのイオン交換反応を通してのみ得られる.単斜晶Li 3V 2(PO 4)3は,高温で超イオン伝導性を示すLi 3Fe 2(PO 4)3の低温相と類似の構造をもつ.すなわち, 3種類のPO 4四面体によって架橋された2種類のVO 6八面体による三次元連結構造をもち,その隙間に3種類のLiO 4四面体が位置する.これまで, Li脱離組成であるx=2.5, 2においても,この単斜晶構造が維持され,そこではV 3+とV 4+の価数秩序が起こると考えられてきた.しかし,種々の組成における単結晶構造解析から,実際には単斜晶-直方晶相転移が2.5 ? x ? 2.7の領域で起こり,VとPの独立原子席はそれぞれ1種類と2種類に減少し,価数秩序は現れないことが明らかになった.図7はLi 2.22V 2(PO 4)3の結晶構造である(空間群Pbna;格子定数a=8.551(1)A, b=8.619(2)A, c=11.984(1)A;2θ(MoKα)=80°, R=0.049).これはLi 3Fe 2(PO 4)3の超イオン伝導相の構造と類似している. Li1は四面体配位をとり0.84の占有率であるのに対して, Li2はピラミッド配位をもち0.27の占有率である. Li1?Li2間の最近接,次近接距離が2.23 Aと3.02 Aであるため,最近接席での同時占有はクーロン斥力により不安定となる.この乱雑性を伴うLi2席は,さらにLiを脱離することで消失する.ある.またV?O?P?O?V経路に有限の超交換相互作用が働く.3.3 Li xVOPO 4, Li xVFPO 4LiVOPO 4には三斜晶相と直方晶相があり,それぞれ高温,低温合成で得られる.図8a, bは, Liを部分的に脱離した三斜晶Li 0.95VOPO 4の結晶構造である(空間群P1 _;格子定数a=6.7404(10)A, b=7.1985(10)A, c=7.908(2)A,α=89.84(2)°,β=91.36(3)°,γ=116.957(10)°). 2種類の歪んだVO 6八面体が存在し,これらはPO 4四面体に架橋されるとともに,酸素を共有してb軸方向に一次元鎖を形成する.この鎖は, V1?V2=3.5986°と3.6219°の交替結合をもち,それぞれの結合角はV1?O6?V2=137.00°とV1?O5?V2=139.23°である.ここでV1?O6とV2?O5の共有結合性が高いので, V1?O6?V2?O5経路の超交換相互作用が最も有効である. 2種類のLi席は五面体配位をとり,ほぼ同じ占有率でa+b軸方向に沿って伸びるトンネルに位置し, Li脱離に伴いV1とV2の価数は一様に増加する.Li xVOPO 4の帯磁率は,構造の特徴を反映して,図9a, bなお本系のV 3+イオンの結晶場は, Li 9V 3(P 2O 7)3(PO 4)2と同様に中間的であり,三方対称分裂幅は約?10 3 cm ?1で(a)(b)図7Li 2.22V 2(PO 4)3の295 Kにおける結晶構造.(Crystalstructure of Li 2.22V 2(PO 4)3.)ab面投影図. Li1とLi2の占有確率は,それぞれ0.84(3), 0.27(3). Li1?Li2を結ぶ実線と破線は最近接,次近接距離. Li2?Li2を結ぶ実線はLiの拡散経路.図8Li 0.95VOPO 4の295 Kにおける結晶構造.(Crystalstructures of Li 0.95VOPO 4.)(a)a+b軸に沿った投影図.(b)a軸に沿って投影した超交換相互作用経路.実線と破線のV1?V2結合は,それぞれ3.5986(13)A, 3.6219(13)A.82日本結晶学会誌第56巻第2号(2014)