ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6

概要

日本結晶学会誌Vol55No6

会報大学院工学研究科応用化学専攻教授として定年退職されるまで,結晶学を構造化学分野の研究に応用するために尽力されました.大阪大学退職後は福井工業大学工学部教授として, X線結晶構造解析法の普及に努められました.甲斐泰会員は,アルデヒドの立体特異的重合反応における鍵化合物となる重合触媒,触媒－モノマー錯体,触媒－モノマー－助触媒モデル錯体,触媒－阻害剤錯体の結晶構造解析を行うことにより,立体特異的重合機構について構造化学的見地から考察し,学位（工学博士（大阪大学））を得ておられます.その後,一連のシクロファン化合物,アヌレン類,サーキュレン類,ビカリセンなど特異なπ電子構造を持つ有機化合物の構造化学を推進されました.その後,スイス連邦共和国チューリッヒ工科大学（ETH）の有機化学科Jack David Dunitz教授の研究室で構造化学の研究に従事し,有機リチウム化合物の結晶化および構造解析を進められました.また,有機触媒反応の構造研究の一環として,前周期遷移金属―活性有機基質複合体の構造化学研究を20年近く継続して進められ,多くの研究論文へと結実されました.これら一連の研究は「活性有機分子の構造化学的研究」としてまとめられ,その成果に対して日本結晶学会から1991年度日本結晶学会賞が授与されています.1980年から,タンパク質の構造解析に取り組み,アズリンやシュードアズリンなど一連の銅タンパク質の構造研究を進められました.その後,光合成暗反応で触媒する炭酸固定酵素の研究に着手し, C3植物のリブロースビスリン酸カルボキシラーゼ・オキシゲナーゼ（RuBisCO）およびC4植物のホスフォエノールピルビン酸カルボキシラーゼ（PEPC）の構造研究で多くの成果を上げられました.特にPEPCの研究では,酵素－阻害剤錯体,酵素－活性中心金属－阻害剤錯体,酵素－活性中心金属－基質類似体－阻害剤錯体,酵素－活性化因子錯体など一連の構造解析を通して, PEPCの炭酸固定反応機構を明解に示すことに成功されました.甲斐泰会員は,日本結晶学会の委員,幹事,評議員として長年活躍されました.とくに,情報幹事としては,日本科学技術情報センター（JICST）の結晶データベース構築に日本結晶学会として協力する体制づくりに寄与され,また行事幹事としては, X線結晶構造解析を広く科学分野に普及させるための各種講習会を企画実施されました.2010～2011年度には,会長として学会の発展に尽力されました.さらに,日本学術会議の結晶学研究連絡委員会委員やIUCr分科会幹事などを歴任され, IUCr2008大会の日本誘致に努力されました.誘致決定後は大会組織委員会事務局長として大会の企画・立案と円滑な運営に尽力され,会議の成功に大きく貢献されました.以上のように,甲斐泰会員は, X線結晶構造解析を構造化学の分野に広く適用し,具体的な成果を示すととも日本結晶学会誌第55巻第6号（2013）に,その手法を関連科学分野に広めるために大きく貢献されました.このような長年の結晶学の発展に活動されたことに感謝するため,甲斐泰会員を日本結晶学会名誉会員として推戴することを提案いたします.略歴1970年3月大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻博士課程中途退学1970年4月大阪大学工学部助手1973年8月工学博士（大阪大学）1985年12月大阪大学工学部助教授1993年5月大阪大学工学部教授1998年4月大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻教授2006年4月大阪大学環境安全研究管理センター長2007年3月大阪大学定年退職名誉教授2007年4月福井工業大学工学部教授2009年10月福井工業大学工学英語教育センター長2010年4月～2012年3月日本結晶学会会長2013年3月福井工業大学定年退職平成25年第3回評議員会議事録日時：平成25年10月11日（金）16：00～18：15場所：熊本大学理学部2号館C330号室出席者：足立伸一（行事幹事）,雨宮慶幸,五十嵐教之,井上豪（会計幹事）,植草秀裕,上村みどり,神山崇,清谷多美子,久保田佳基（情報幹事）,栗栖源嗣（編集幹事）,坂田誠（会長）,佐々木聡,菅原洋子,関根あき子（男女共同参画推進幹事）,高田昌樹,津田健治,鳥海幸四郎,中川敦史,西堀英治（広報幹事）,藤原明比古（庶務幹事）,山本雅貴,吉朝朗,渡邉信久委任状出席者：尾関智二,黒岩芳弘,今野美智子,千田俊哉,中井泉,樋口芳樹,三木邦夫,姚閔,山縣ゆり子欠席者：神谷信夫,杉山和正,濡木理事務局：古川ひとみ（五十音順）議事：報告事項1幹事報告1.1庶務幹事報告（藤原庶務幹事）平成25年6月29日から平成25年10月9日までの会員の異動状況が報告された. 10月9日現在,会員数が1246（個人会員1223名,賛助会員23社）となった.学会共催等依頼については共催依頼2件,協賛依頼3件が報告された.次に,平成26～27年度評議員候補者推薦投票の開票結果が報告された.開票日時：平成25年10月2日（水）13：30～14：30373