ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6
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日本結晶学会誌Vol55No6
クリスタリット(非周期構造)の解析のために用いられる.仮想的な高次元空間における周期構造を考え,その三次元断面として実際の非周期構造を表現することができる.また,高次元構造モデルは変調構造の整合相に対しても有効であるほか,種々の長周期構造にも適用でき,ホモロガス相などの一連の構造を統一的に表現できる,などのメリットがあることが知られている.(物質・材料研究機構道上勇一)N-Terminal Nuclephile-ヒドロラーゼスーパーファミリータンパク質N-Terminal Nucleophile HydrolaseSuperfamilly ProteinN-Terminal nucleophile-ヒドロラーゼは, 1本の不活性型の前駆体ポリペプチド鎖として翻訳されたのち,プロテオリティックなプロセシングにより,活性をもった成熟型になる酵素群を指す.プロセシングにより新しくできたN末端のアミノ酸残基(B鎖のN末端のアミノ酸残基)の側鎖のOあるいはS原子が加水分解反応(アミダーゼ反応)の求核原子となることから,この名前がついた.これらの酵素はαββα構造をとり,活性中心付近の立体配置(求核原子,α-アミノ基のN原子,オキシアニオンを安定化させる原子の位置)が酷似しており,このような構造(フォールディング)の類似性から一つのスーパーファミリーとして分類されている.これらの酵素群の一次構造上の類似点や共通したモチーフはない.γ-グルタミルトランスペプチダーゼ,ペニシリンアシラーゼ,グルタミンアミドトランフェラーゼなどが含まれる.宮崎大学テニュアトラック推進機構和田啓ホモロガス相Homologous Phases組成式がある指数(自然数mなど)を用いて系統的に表現でき,構造的にも共通した特徴を有する一連の相を総称してホモロガス相と呼ぶ.一般に指数の増大とともに特定の軸方向の周期が規則的に増大するため,無機物質としては比較的長周期の構造となることが多い.一部の遷移金属酸化物の混合原子価状態で古くから知られているマグネリ相や,いわゆる層状ペロブスカイトなど,きわめて多くの化合物群がホモロガス相として表記される.(物質・材料研究機構道上勇一)高次元構造モデルHigher-Dimensional Structure Model三次元よりも高い次元(高次元)における構造モデル.通常は不整合構造や準結晶など,周期性をもたない構造日本結晶学会誌第55巻第6号(2013)回折イメージング(回折顕微法)Diffractive Imaging回折パターンから実像を再構成する手法で,回折パターンを記録する際に失われる位相情報を再生するためにフーリエ反復位相回復法を適用した計算機処理を行う.得られる実像の分解能は記録する回折パターンの回折角に依存するため,通常の顕微法のようにレンズ収差に依存せず,高分解能化が可能となる.また,振幅像のみならず位相像も得られる.コヒーレントな条件で回折パターンを取得する必要があるため,試料サイズが照射ビームの可干渉距離程度に制約される.そのため,微粒子やチューブ状試料のような孤立した試料を用いる場合と,微小開口を用いて観察領域を制限する場合とがある.すなわち,照射領域の一部は何もないことを実空間での既知情報,回折パターンから導出した振幅情報を逆空間での既知情報として,フーリエ変換を繰り返し,位相情報を再生する.用いる試料は結晶に限らず,周期構造・非周期構造とも再構成可能である.(㈱日立製作所中央研究所上村理)中間酸化物Intermediatesある化学組成の酸化物がガラス化しやすいかどうかを判断する基準を設けることは,ガラス科学において重要である. Sunはまず,単純酸化物M mO n(=MO x:x=n/m)については,強固なM-O結合をもつものが三次元不規則網目構造をとりうる,すなわちガラス化しうると考えた. 1)そこで, 1モルのMO xを完全にばらばらにするのに必要なエネルギー(解離エネルギーE D(kcal/mol))を,さまざまな酸化物について実験的に求め,それをM原子の酸素配位数nで割ることにより, M-O単結合強度εを算出した.その結果,単純酸化物M mO nは,εの大きさにより3つのグループに分類された.εが80 kcal/mol以上の場合は,単独で三次元不規則網目構造を形成しうる「網目形成酸化物」,60 kcal/mol以下では,網目形成酸化物が作る網目中に入ることで特性に影響を及ぼす「修飾酸化物」,そしてεが60~80 kcal/molの酸化物は,網目形成酸化物の一部と置き換わって網目形成に加わるか,あるいは修飾酸化物としての役割も果たしうる「中間酸化物」と名付けられた. Sun369