ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6

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日本結晶学会誌Vol55No6

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概要

日本結晶学会誌Vol55No6

上村理,郷原一寿図3多層カーボンナノチューブの回折パターン(白黒反転:照射エネルギー20 keV)と再構成像.(Reversed diffraction pattern(a)and reconstructedpattern of MWCNT by prototype microscope(b).TEM image of the SWCNT was inserted in(b).)照射エネルギー20 keVの電子ビームを用い,孤立したMWCNTから回折パターンを得た.再構成像を得る際のフーリエ反復位相回復では, HIOで500回反復計算を行った後, ERで500回反復計算を行った.図3bには,回折パターン取得前に透過電子顕微鏡(TEM)観察で得たMWCNTの像(照射エネルギー200 keV)を並べて示した.TEM像との比較から,得られた再構成像はMWCNTの特徴的な形状(内径,外径,ウォール数)を再現できていることがわかる.しかしこの再構成像では,強度が一様でない,強いノイズが存在するなどの課題が残った.次に,試料を単層カーボンナノチューブ(SWCNT)とし,画質の改善と分解能の向上を試みた.ここでは汎用の走査電子顕微鏡(SEM)をベースとした実験装置(電子回折顕微鏡)を試作し, 25)実験を行った.試作した電子回折顕微鏡の概観を図4に示す.インレンズSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-5500)の鏡体の下に,回折パターンを記録するためにTEM用カメラ室(フィルム搬送機構)を搭載した.回折イメージングを行う際の回折パターンの記録には,高い線形性とダイナミックレンジ(14 bit)を有するイメージングプレート(imagingplate:IP)を用いた.またフィルム搬送機構の下にCCDカメラを設置した. CCDカメラはIPほど広い領域の回折パターンを記録できないが,回折パターンの確認にIPほど時間を要しないため,主にモニター用とした.可動式のSTEM検出器を搭載することで,二次電子像・反射電子像に加え,明視野(BF-)STEM像を得られるようにした.照射エネルギーは0.5~30 keVで可変となっている.図5に回折パターンを取得する際の光学系を示す.回折イメージングに用いるには,照射ビームの干渉性を高くする必要がある.そのため, SEMおよびSTEM像を得る場合は照射光学系をある程度開き角を大きくして回折収差を図4電子回折顕微鏡概観図.(Appearance of electrondiffraction microscope.)図5光学系概略図.(Schematic diagram of optics in diffractionrecording.)低減し試料上に小さく絞ったビームを照射するのと異なり,対物レンズを用いずにコンデンサレンズで試料上にビ352日本結晶学会誌第55巻第6号(2013)