ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6
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日本結晶学会誌Vol55No6
γ-グルタミルトランスペプチダーゼの立体構造と特異的反応特異的に処理する酵素(glutaryl-7-aminocephalos-poranicacid acylase)に改変しようとした. 7-Aminocephalosporanicacid(7-ACA)は半合成セファリスポリンの原料で,世界で最もよく売られている抗生物質の生産に必須な化合物である.われわれは最初E. coli GGTを出発に,活性部位近くのアミノ酸残基をさまざまに変換した酵素を作り,GL-7-ACA合成能を調べた. 18),19)われわれが調べた限りD433N/Y444A/G484Aが最も活性が高く, k cat/K m値がそれまで知られていた一残基置換体(D433N)の50倍になった.われわれは出発酵素をB. subtilis GGTに選び,同様の試みをした. 20) B. subtilis GGTはもともと弱いながらglutaryl-7-ACA acylase活性をもっていた.部位特異的変異およびランダム変異の結果, E423Y/E442Q/D445N変異体はk cat/K m値が3.41 s ?1 mM ?1(catalytic efficiencyが1000倍,turnover rateが10倍)になった.7.バクテリア由来以外のGGT図5阻害剤アシビシンの化学構造とGGT中でのコンフォメーション.(The structure of acivicin and itsadduct form in GGTs.)(a)アシビシンの化学構造,(b)大腸菌GGT-アシビシン複合体構造,(c)ピロリ菌GGT-アシビシン複合体構造,(d)枯草菌GGT-アシビシン複合体構造.アシビシンの電子密度(Fo-Fc omit map)を重ねて描画している.いずれの場合も,アシビシンは活性残基(Thr)に共有結合していた.解能で調べた. 15)アザセリンの電子密度も活性部位に現れ,Thr391 Oγにはテトラへドラルをした原子を介して結合していた.どのようなグループを介して結合しているか,この分解能でははっきりと同定できていない.6.GGTの改変GGTはグルタチオンなどを加水分解や転移反応を触媒する酵素であるが,似た(メチレン基が1つ多い)基質を日本結晶学会誌第55巻第6号(2013)これまでにX線解析ができているGGTは,どれもバクテリア由来のものばかりである.植物由来(Arabidopsisthaliana)のGGTアイソザイムとバクテリア由来のものとを比べてみると,二次構造領域をつなぐループ領域の長さがさまざまであることがうかがえ,両者の立体構造は基本的には同じであろう(3種のA. thaliana GGTとE. coliGGTでsequence identityは31~35%). 21)活性部位を取り囲むアミノ酸残基も保存されている.一方,動物とりわけヒトのGGTに関しては,さまざまな観点から研究例が非常に多い. GGTはさまざまな病気に関係しているからであろう,医学・薬学関係の観点からの研究例が多い.バクテリアのGGTの立体構造は,ヒトGGTのために利用されているという感さえする. 9)ヒトGGTは酵素活性(加水分解/転移反応)など諸性質が,バクテリアGGTのそれらとはかなり違う. 22)ヒトGGTを含めほ乳類のGGTは糖鎖で修飾されているので,結晶化が困難と予想される.なお,糖鎖で修飾されていないヒトGGTを,大腸菌を使って発現させてもまともにフォールドしない.この原稿の査読中にヒトGGTの結晶構造解析が報告された. 23)ヒトGGTの構造はバクテリアGGTと類似していたが, lid-loopが短く触媒ポケットが露出した構造であった.このような基質フリーの構造は報告されたものの,ヒトGGTがもつユニークな諸性質の構造要因は現在も不明のままである.これまでわれわれはヒトGGTに特異性が高い新規阻害剤を用いて,基質認識や構造・活性相関をみてきた. 24)これらの阻害剤を用いることで,ヒトGGTの基質認識機構の解明に目下取り組んでいる.謝辞GGTの一連の研究には多くの方々の貢献によりでき上343