ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6
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日本結晶学会誌Vol55No6
γ-グルタミルトランスペプチダーゼの立体構造と特異的反応図1GGTのフォールディング.(Structure of E. coli GGT.)濃灰色でL-サブユニット,灰色でS-サブユニットを示している.図2図3γ-グルタミル-酵素中間体の構造.(The structure ofγ-glutamyl-enzyme-intermidiate.)(a)T391に結合したγ-グルタミル基の電子密度,(b)グルタチオンの化学構造.反応の時間経過に伴う電子密度変化.(The electrondensity of the active pocket of E. coli GGT by timelapsesoaking.)それよりソーキング時間が長いと,遊離したグルタミン酸が結合していた(図3).中間体の電子密度には,中間体を加水分解する水分子も現れていた.大腸菌GGTでは,中間体を形成する反応速度は速く,中間体を加水分解する速度は比較的遅かったのであろう.ちなみにHelicobacterpyloriのGGTで同様の実験を試みたが,成功しなかったと聞いている(Bacillus subtilis GGTでは試していない). 9) E.coli GGTでは, lid-ループと呼んでいるセグメントがγ-グルタミル基/グルタミン酸を外界から覆っている.3.自己触媒反応により起こる構造変化われわれはプロセッシングによりどのような構造変化が起こるかを見るために,プロセッシングが起こり得ないミュータント(Thr391Ala)を調製(図4a)し,その結晶解析をした. 10),11)まずわかったことは,プロセッシングが起こるとIle378のφ角が変化し, L-サブユニットのC末端セグメントが大きく動くことであった(図4b).このセグメントが移動すると,代わりにlidループはこの位置をカバーできるようになる(図4c). Lidループの両端のアミノ酸残基はGly439とAla436で, lidループがフレキシブルであるよう設計されている. L-サブユニットのC末端セグメントがこの場を離れると, 411~416の部分が移動し,ちょうど基質が適合する大きさのポケットが完成する(図4d).ちなみに, GGTのもう1つの結晶系では, lidループの電子密度は見えない.基質の有無によりフレキシブルなlidループは開いたり閉じたりしているのであろう.なお,このミュータントの全体構造は,上記以外wild-typeと目立った違いはない(図4b).日本結晶学会誌第55巻第6号(2013)341