ブックタイトル日本結晶学会誌Vol55No6
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日本結晶学会誌Vol55No6
竹中康司選択した.いずれも, Mn 3ANとなったとき,基底状態で立方晶反強磁性となり,磁気体積効果を示す.図2にはA=Ge, Snの結果が示してある. Mn 3GeN, Mn 3SnNは上記8種のMn 3ANとは異なった構造・磁性を有し,磁気体積効果も確認されていない.熱膨張の異常は磁気相転移に対応していることが,図3に示した化学量論比にあるMn 3ANの磁化M(T)との対比からわかる.この系では,熱膨張の異常から磁気転移温度T*[強磁性転移のときキュリー温度T C;反強磁性転移のときネール温度T N]が確認できる.8種の化学量論比にあるMn 3ANはいずれも反強磁性転移温度T Nで熱膨張に異常を示し,低温反強磁性相で体積が大きくなる.その度合いは,仮に磁気秩序がなかったとしたときの仮想的な熱膨張(?L/L)phと測定された熱膨張との差で定義される「自発体積磁歪」ωsで評価される.図1に示されたMn 3Cu 1?xA xN固溶系の線熱膨張を見ると,常磁性状態における線熱膨張がおおむねxによらず一致して見える.そこで,その包絡線を非調和フォノンによる理想的な格子定数a(T)の理論式29)[ 1 B D ]( )= +( ) ( )aT a krγKV ?θT0 0(1)図2Mn 3Cu 1?xA xNの線熱膨張?L(T)/L.(Linear thermalexpansion of Mn 3Cu 1?xA xN.)(基準温度500 K):A=Ge(a), Sn(b).挿入図(a):x=0.15についてのX線回折ピーク(111).挿入図(b):逆ペロフスカイトM 3AXの結晶構造.を用いてフィッティングすることで(?L/L)phを求めた.ここでa 0, k B, r,γ, K, V 0, ?(x),θDはそれぞれ, 0 Kでの格子定数,ボルツマン定数,単位胞内の原子数,グリュナイゼン定数,体積弾性率, 0 Kでの単位胞の体積,サッチャー関数, 30)デバイ温度である.立方晶であるためV=a 3とした.また,これまでになされた機械特性の評価25)で得られたヤング率を基に, Kを130 GPaに固定した. rは5とした.その結果,フィッティング・パラメーターはa 0,γ,θDの3つに集約された.表2に示すとおり,γは2.11~2.65,θDは336.8~525.9 Kとなり,遷移金属を基調とする金属間化合物の標準的な値に近く, 31)物理的に妥当と考えられる.ここで議論している立方晶の場合,ωsは線熱膨張?L/Lと,ωs=3[?L/L-(?L/L)ph]の関係がある.この関係を用いて求めたωsの10 Kでの値を図4にまとめる. A=Ge,Snではωs=0となると考えられる. Mn 3CuN自体はωsがほとんどゼロとみなせるが,少量のドーパントで大きなωsが得られるため,同様の手順で求めたA=Cu 0.85Ge 0.15のωs=12.34×10 ?3を潜在的なωsの値として掲載した.図3化学量論比にあるMn 3ANの磁化M(T).(Magnetization of stoichiometric Mn 3AN.)(a)A=Ni, Zn, Ga, Pd, Ag.(b)A=Co, Rh, Ag, In.(c)A=Cu, Ge, Sn, Sb.挿入図:A=GeとSnについての磁化を温度範囲300~700 Kで拡大した.334日本結晶学会誌第55巻第6号(2013)