このたび、名誉ある世界結晶年2014日本委員会の委員長に就任いたしました。
世界結晶年2014 (IYCr2014)は、結晶学の100年の素晴らしい業績と、人類の進歩への貢献を祝う世界的な行事です。近代結晶学の誕生は100年前の3人のノーベル賞受賞者によって成されたとされています。1914年に受賞したマックス・フォン・ラウエであり、1915年に受賞したブラッグ親子です。その後、DNAのらせん構造の決定から酵素やリボソーム、フラーレン、ナノチューブ、グラフェンなど生命科学からナノテクノロジーまで様々な科学技術の分野で、多くの革新的な発見が結晶学によって成されました。
日本でも、2人の先駆的な科学者によって結晶学の扉が、ラウエやブラッグとほぼ同時期の1914年に開かれました。それが寺田寅彦と西川正治らによるX線回折の研究です。1936年には中谷宇吉郎がユニークな雪の結晶の研究を行い、世界で初めて人工雪の結晶の製作に成功しました。そして雪の結晶の研究を気象学や氷河学の研究に応用し発展させました。「雪は天からの手紙である。」は中谷の残したあまりにも有名な言葉で、多くの方がご存じの事と思います。また、日本で広く発展した結晶学が、科学技術の研究のみならず、産業応用においても、技術革新の牽引役を担ったことを多くの方に広く知って頂くことも、極めて大切であると考えています。
2014年、日本委員会は、様々な機会を通じて、多様化する科学技術のコミュニティにおける結晶学の位置づけを明確にし、学術界や産業界との学際的な連携を促進し、一般の方々にも結晶学の魅力を伝えていきたいと考えております。
最後に、世界結晶年2014の成功を確かなものとするために、多くの皆様方の御支援と御協力を頂きましたことを、感謝いたします。
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