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「結晶」とは、人類の歴史において、常に私たちの身の回りにある物質の一つの形態として存在しています。その典型的な「結晶」は、「雪の結晶」や、「食塩」、「宝石」など身近なものがあります。約100年前、マックス・フォン・ラウエ博士はX線による結晶の回折現象の謎を解き1914年にノーベル物理学賞を受賞しました。そして、ヘンリー・ブラッグとローレンス・ブラッグ親子は結晶が原子配列して創られているものであることを、食塩の結晶のX線回折によりで明らかにし1915年にノーベル物理学賞を受賞しました。これらの革新的な実験は、近代結晶学の誕生と位置づけられています。その後、この近代結晶学は、23ものノーベル賞受賞につながり、科学技術の発展に貢献してきました。2012年7月、国際連合の総会はモロッコからの提案を承認し、国際結晶学連合(IUCr)、ユネスコ(UNESCO)と国際科学会議(ICSU)の支援のもと、これらの業績の100周年を記念するため、2014年を世界結晶年として制定することとしました。これが「世界結晶年2014」です。
日本における近代結晶学の始まりも100年の歴史を遡ることができます。寺田寅彦(東京帝国大学)はX線回折の実験を行い、ヘンリー・ブラッグと同じ「X線と結晶」と題する手紙(Nature, 91, 135-136, (1913))を1913年に英国科学雑誌Natureに送っています。そして西川正治(東京帝国大学・理研)は繊維・薄板・粒状のX線回折図形について報告し(Proc. Tokyo Math-Phys. Soc., II-7, 131-138 (1913))日本における近代結晶学の扉を開きました。その後、中谷宇吉郎(北海道大学)は、それまでの自然雪の結晶について分類学的研究の後、1936年には人工雪の結晶を創り出すことに世界で初めて成功しました(中谷宇吉郎雪の科学館 http://www.kagashi-ss.co.jp/yuki-mus/)。そして、この半世紀は、結晶学は、学術研究のみならず、半導体産業、鉄鋼業、製薬業、エレクトロニクス産業、繊維産業、高分子産業などの産業界発展の基礎を築いてきました。
そこで、日本では、日本学術会議、関連する学協会、及び、国際結晶学連合の協力の下、「世界結晶年2014日本委員会」が結成されました。日本委員会は、近代結晶学誕生100周年を祝うと共に、日本の、これまでの、現在の、そして将来への結晶学の役割を紹介する活動を行っていきます。
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