ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No5-6

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概要

日本結晶学会誌Vol60No5-6

クリスタリットして酸素欠陥が生成する.このような欠陥は光励起により生成したキャリアのトラップサイトとして働くため,窒素ドーピングTiO 2は可視光を吸収できても光触媒活性をほとんど示さない.1)一方で共ドーピングを施したもの,例えばTa 5+とN3-の共ドーピングを施したルチル型TiO 2ではこのような欠陥生成が抑制され,可視光照射下での水の酸化反応に高い光触媒活性を示す.1)A. Nakada et al.: J. Mater. Chem. A 5, 11710(2017).2)T. Takata et al.: J. Phys. Chem. C 133, 19386(2009).(東京工業大学理学院前田和彦)RLPモデルRevised Lone Pair ModelPb 2+やBi 3+などを重金属イオン含む無機化合物において,金属イオンの非共有電子対(lone pair),すなわちs 2電子は化学的に不活性と考えられてきた.一方で,このような“不活性電子対”をもつ化合物は強誘電,マルチフェロイクスなど特異な電子物性を発現することが知られており,このことが不活性電子対と周辺アニオン種との強い相互作用に端を発することがわかってきた.このような軌道間相互作用を説明するのがrevised lone pairmodelである.これによると,金属イオンのs 2電子占有軌道とアニオンp軌道の相互作用の結果生じる反結合性軌道が,金属イオンの非占有p軌道と相互作用してアニオンp軌道を不安定化させる.1)Pb 2+やBi 3+を含む金属酸化物がs電子を含まない類似構造の酸化物と比較して小さなバンドギャップを有することは,この相互作用によって説明できる.1)A. Walsh et al.: Chem. Soc. Rev. 40, 4455(2011).(東京工業大学理学院前田和彦)日本結晶学会誌第60巻第5・6号(2018)273