ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No1

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概要

日本結晶学会誌Vol60No1

温度を変数とした地球内部アナログ物質の構造研究:CaGeO 3高圧ペロブスカイト相について表2Debyeフィットから求めたDebye温度(K).11)(Debyetemperatures(K)determined from the Debye fits.)CaGeO1O2ΘDeq448(2)505(3)728(2)750(5)ΘD100467(3)521(6)719(4)820(9)ΘD010436(2)517(6)597(3)831(6)ΘD001442(2)480(3)1041(13)646(4)ΘD110---1149(23)図6 U eqの温度依存性.11)(Temperature dependence of U eq.)実線はDebyeフィットの結果を示している.図7[hkl]p方向の平均二乗変位MSD hklの温度依存性.11)(Temperature dependence of the mean squaredisplacements MSD hkl(hkl=100, 010, 001, 110)inthe[hkl]p directions.)実線はDebyeフィットの結果を示している.日本結晶学会誌第60巻第1号(2018)=0で固定してDebyeフィットを行った.このようにして得た各原子のΘDeqとΘDhklを表2に示す.Debye温度ΘDから,次式より,原子の調和振動を仮定した場合の一粒子ポテンシャル(OPP)係数qを見積もれる.mk2 BΘ2Dq =2(2)3?式(2)のΘDに対して,ΘDeqを用いれば,あらゆる方向に対して平均化した等方的なOPP係数q eqが,ΘDhklを用いれば,[hkl]p方向の異方的なOPP係数q hklが各原子に対して求まる.OPP係数qは力定数に相当し,結合の強固さなど周りの原子からの相互作用の大きさを知る指標となる.CaGeO 3ペロブスカイトにおけるCa,Ge,O1,O2のq eq値は,それぞれ4.76(2)eVA-2,11.0(1)eVA-2,5.02(2)eVA-2,5.33(5)eVA-2であり,Ca<O1<O2≪Geの順に大きくなる.<Ca?O>および<Ge?O>平均結合距離の熱膨張係数はそれぞれ2.46(4)K-1,0.47(1)K-1であり,CaとGeのOPP係数の大小関係は結合距離の熱膨張係数から期待される結合の強固さの関係とよく一致している.O1およびO2のq eq値は,珪酸塩で通常観測されるO原子の値[?6 eVA-2;例えばMg 3Al 2Si 3O 12ガーネット16)では,5.89(2)eVA-2]よりも有意に小さい.6配位Geは4配位Siよりも高配位数で長い結合距離をもつにもかかわらず,CaGeO 3ペロブスカイトの6配位Geのq eq値[11.0(1)eVA-2]は珪酸塩の4配位Siの値[例えばMg 3Al 2Si 3O 12ガーネット16)では,9.45(7)eVA-2]よりも有意に大きいことは注目に値する.これは,6配位Ge?O結合が大きな剛性をもつことを示しており,GeO 6八面体の歪みがほとんど温度に依存しないという上記の観察からも理解されうる.298 Kでの例に示すように(図8),原子の熱振動はGeにおいてほとんど等方的であるが,Ca,O1,O2において明らかな異方性を示している.そのような異方性はとくにO1とO2において著しい.O1とO2の変位楕円体はそれぞれGe?O1およびGe?O2結合にほぼ垂直に伸長し,それらの最小の主軸は,O1では[001]p方向に,O2ではほぼ[110]p方向に向いている.これらの方向は,測定した温度範囲にわたって,それぞれGe?O1およびGe ?O2結合の方向とほぼ一致している(図8).このように,O1とO2のMSDの大きな異方性は,これらO原子と固く結29