ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No1

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概要

日本結晶学会誌Vol60No1

鉱物の微細組織観察と形成過程の結晶学:シリカ鉱物を中心にして図5Reichenstein-Grieserntal双晶の接合形態図.(An illustration of the ideal habit of the Reichenstein-Grieserntal twinnedcrystals exhibiting r{101}and z{011}faces.)図6Arz-Bord産ルテサイト中のモガン石ドメインの高分解能TEM像とその回折像.(Transmission electron microscopyand selected area electron diffraction images of moganite domain in Arz-Bord lutecite.)モガン石のドメインには石英の倍に相当するd 101(約6.8 A)の格子間隔の縞が観察される.Mg,モガン石;Qtz,石英.図7 Arz-Bord産試料のルテサイトと石英の境界付近の偏光顕微鏡写真.(Cross-polarized opticalphotomicrograph of lutecite and quartz boundary inArz-Bord sample.)石英には菱面体面に平行な成長縞が観察され,ルテサイトは(101)に平行な繊維状組織が顕著である.微鏡下でのルテサイトの光学的特徴は当初モガン石の光学的特性を反映しているのではないかと考えられてきたが,この双晶則で接合する石英の特徴として解釈することができる.ルテサイトはモガン石ではなく,モガン石日本結晶学会誌第60巻第1号(2018)を含む[212]方向に伸長した石英結晶集合体であることを明らかにした.では,このルテサイトはどのように形成されたのであろうか.この試料では,ルテサイトは石英結晶を基盤として成長している(図7).光学顕微鏡観察から石英の菱面体面(r面とz面)に凹凸が生じ,ルテサイトの繊維状組織へと移行している.石英の比較的大きな結晶から0.1~0.5μmの大きさに急激に減少している.この際,基盤となる石英と,繊維状の組織中の石英は平行である.すなわち,ルテサイトは石英結晶の細粒化によって形成され,細粒化とともにモガン石が結晶中に出現すると考えられる.6.モガン石の組織から考察する準安定相の形成過程地表付近での準安定相の挙動についていまだすべてを明らかにはできていない.組織解析から準安定相の形成についてどのようなことがわかっているか整理してみる.準安定相の出現には核形成プロセスが関与していると考えられてきた.つまり,安定相の表面自由エネルギーより準安定相の表面自由エネルギーのほうが小さく,核21