ブックタイトル日本結晶学会誌Vol60No1

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概要

日本結晶学会誌Vol60No1

大藤弘明図34種類のグラファイト多結晶体における結晶子サイズの分布(内側のヒストグラム)とそれから合成されたNPDにおけるダイヤモンドの粒径分布(外側のヒストグラム).(Histograms showing the crystallite size distribution of4 polycrystalline graphite samples(inner histogram)and grain size distribution of diamond in NPDs synthesized(outerhistogram).)21)詳細は本文を参照のこと.も出発物質のグラファイトの結晶性が密接に関係している.結晶子サイズの小さなグラファイト粒子ほど欠陥や結晶表面のダングリングボンドの密度が高いため,ダイヤモンドの核形成に必要な活性化エネルギーが下がり,核形成速度が結晶成長速度に比べて優勢となり,より細粒なダイヤモンドが生成されるのだ.一方,NPD全体に占めるラメラ状組織の割合は,試料A~Dにおいてそれぞれ8.7%,9.1%,13.1%,2.0%であり,出発物質におけるコークス由来の粗粒な粒子の割合やサイズとの相関が認められた. 21)これは,前述の結晶化のプロセス(図2)を踏まえてもリーズナブルである.なお,ラメラ状組織はクラックの伝播や連鎖をブロックし,NPDの優れた強度特性に貢献しているため, 22)一定量は含まれているのが理想的だと考えられる.このように,出発物質の結晶性を調節することによって,合成されるNPDの微細組織(粒径やラメラ状組織の量比など)を自在にコントロールできる可能性が高いことが示された. 21)実際,出発物質の結晶性をさまざまに変化させた場合,粒径数nm以下のきわめて細粒なNPDから全体として層状組織を示すものまで,さまざまなバラエティが得られた(図4).特に,結晶性のきわめて良い高配向熱分解グラファイトから合成される層状NPD 23)は,積層方向にダイヤモンド[111]の強い選択配向をも図4結晶性の異なる出発物質から合成したさまざまな多結晶ダイヤモンド.(Various diamonds synthesizedfrom graphitic starting materials with differentcrystallinities.)ち,合成試料(円柱形)の上下端面は,{111}面を向けたナノ粒子より構成される.ダイヤモンドの{111}面は,最密充填した炭素原子で構成され優れた耐摩耗性能を有する24)ことから,この層状NPDは積層面においては通常のNPDよりもさらに優れた耐摩耗性能を示すと考えられる.以上のように,相転移や組織化メカニズムの本質を理解し,組織制御を試みることは,高圧合成ダイヤモンド12日本結晶学会誌第60巻第1号(2018)